第18話 鐘が鳴ったら、だいたい飛んでくる
――ゴォォォン……!!
町中に、重たい鐘の音が響き渡った。
「……あ」
俺――マスクは、宿屋の廊下で立ち止まった。
「……これ、
絶対ロクなやつじゃない」
予感は、
大体当たる。
⸻
「ワイバーンだぁぁ!!」
「空を見ろ!!」
外が、一気に騒がしくなる。
宿屋の窓から顔を出すと――
「……うわ」
空。
ワイバーン。
一体、二体……
いや、五、六……。
「……群れかよ」
翼を広げ、
街へ向かって降下してくる。
火は吐かないが、
爪と体当たりだけで十分危険。
「……おいおい」
兵士たちが慌てて弓を構える。
「当たるか、あれ……」
正直な感想だった。
⸻
「……マスクさーん!!」
聞こえた。
完全に聞き覚えのある声。
「……はいはい」
俺は、深く息を吸う。
「……今日も、
何もしない日は来なかったな」
パイプイスは――
今回は、使わない。
「……空相手に、
イスは無理だ」
代わりに、
地面を蹴る。
⸻
「……え?」
次の瞬間。
俺は――
屋根の上にいた。
「……あ?」
自分でも驚く。
「……跳びすぎだろ」
だが、
考える暇はない。
ワイバーンが、
真上を通過する。
「……よし」
助走。
「ドロップキィィィック!!」
――空中。
ワイバーンの顔面に、
華麗な蹴り。
「ギャァァ!!」
翼が、バランスを崩す。
「……おい、
落ちるぞ」
そのまま――
ドォォン!!
街の外壁付近に、
激突。
⸻
「……え?」
「……今、
人が飛んだ?」
「……蹴った?」
街中が、
完全に静まり返る。
次の瞬間。
「うわぁぁ!!」
「落ちた!!」
パニック再開。
⸻
二体目が、
低空で突っ込んでくる。
「……次」
俺は、
走った。
屋根から屋根へ。
「……俺、
いつから屋根専門になった?」
疑問は、
後回し。
ワイバーンの背中に、
飛び乗る。
「……重い」
だが――
「スクリュードライバー!!」
そのまま、
回転。
「ギャァァァ!!」
地面に――
叩き落とす。
ドゴォォン!!
⸻
「……」
街が、
揺れた。
「……街中で
やる技じゃないだろ……」
自分でツッコむ。
⸻
「マスクだ!!」
「覆面が空から落としてる!!」
「なんで空中で
プロレスしてんだ!!」
ついに、
街中が総ツッコミ。
「剣使え!!」
「魔法は!?」
「いや、
それ以前の問題だろ!!」
だが。
空には、
まだ残っている。
「……最後」
俺は、
深く息を吸った。
⸻
三体目。
高度を取って、
急降下。
「……真正面か」
屋根の端で、
構える。
「……頼むから、
誰も見てるな」
――無理だった。
「がんばれー!!」
「マスクー!!」
声援。
最悪だ。
でも――
力が、入る。
「……くそ」
「ドロップキック!!」
正面衝突。
衝撃。
そのまま、
地面へ。
「……っ」
着地。
膝が、
少し痺れる。
「……疲れた」
⸻
空が、静かになる。
残ったワイバーンは、
逃げていった。
「……終わり、か」
息を整える。
⸻
「……」
周囲を見回す。
兵士。
冒険者。
市民。
全員、口が開いている。
「……あの」
誰かが、
恐る恐る言った。
「……今の、
何?」
「……プロレス」
「嘘つけ!!」
即ツッコミ。
⸻
その時。
「……マスク」
低い声。
振り向くと――
正統派勇者パーティの剣士。
「……空の魔物に、
格闘で勝つな」
「……俺も、
そう思う」
剣士は、
少し黙った後――
「……だが」
目を逸らす。
「……助かった」
「……それで十分だ」
⸻
街中が、
ざわつき続ける。
「……なぁ」
俺は、
空を見上げて呟いた。
「……女神」
返事はない。
だが――
マスクの目元が、
やたら誇らしげに光った。
「……やめろ」
完全に、
見世物が確定していた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、
感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。
皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。
誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。
これからもよろしくお願いします。




