表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/44

第15話 冒険者ギルドは、最初に現実逃避をした




 ――冒険者ギルドは、思ったよりも騒がしかった。


 木造の建物。

 掲示板には依頼書がぎっしり。

 中では冒険者たちが酒を飲み、笑い、怒鳴っている。


「……ここか」


 俺――マスクは、入口の前で一度立ち止まった。


 理由は簡単だ。


 目立つ。


 覆面。

 パイプイス。

 街の噂の張本人。


「……入るぞ」


 覚悟を決めて、扉を開けた。


 ――一瞬。


 音が、消えた。


 笑い声。

 話し声。

 それらが、綺麗に止まる。


「………………」


 数十人分の視線が、

 一斉に俺に刺さった。


「……あ」


「……噂の……」


「……マジで来たぞ……」


 ひそひそ声。


 居心地は、最悪だった。



「……えっと」


 カウンターの奥で、

 受付嬢が引きつった笑顔を浮かべる。


「ご用件は……?」


「……仮登録した」


 門番からもらった紙を出す。


「……仕事、探してる」


 正直に言った。


「……あ、はい」


 受付嬢は紙を受け取り、

 少しだけ目を泳がせた。


「で、では……

 鑑定を……」


「……必要か?」


「……必要です」


 断れなかったらしい。



 鑑定用の水晶が、

 カウンターに置かれる。


「……では、

 手を」


 言われた通り、

 そっと触れる。


 ――光。


 次の瞬間。


「………………」


 受付嬢が、固まった。


「……え?」


 覗き込む別の職員。


「……ちょっと、

 これ……」


 表示された文字を、

 読み上げる。


「パワー……異常値」


「耐久……測定不能」


「反射……規格外」


 ざわつくギルド内。


 だが――


「……人気?」


「……盛り上がり度?」


「……観客補正?」


 意味不明な項目が、混じっている。


「……何これ」


 受付嬢が、素直な感想を漏らす。


「……俺も知りたい」


 心の底から思った。



「……あの」


 後ろから、

 冒険者の一人が声をかけてきた。


「武器は?」


「……素手」


「……は?」


「……あと」


 俺は、

 パイプイスを少し持ち上げた。


「……これ」


「……イス?」


「……パイプイス」


 沈黙。


「……剣は?」


「……使えない」


「魔法は?」


「……使えない」


「……弓は?」


「……使えない」


 冒険者が、

 頭を抱えた。


「……どうやって

 ゴブリンキング倒したんだ……」


「……投げた」


「……何を?」


「……ゴブリンを」


「……」


 完全に、

 会話が噛み合っていなかった。



「……えーっと」


 受付嬢が、咳払いする。


「登録区分ですが……」


 紙に、

 慎重にペンを走らせる。


「……戦士、ではありません」


「……だろうな」


「……格闘家……?」


「……近い」


「……レスラー……?」


「……それだ」


 受付嬢は、

 しばらく悩んだ末――


「……職業欄は

 **“特殊”**にします」


「……助かる」


「助かりません!!」


 横の職員が、

 即ツッコミを入れた。


「こんなの前例ありません!!」


「……俺も前例になりたくない」



「……依頼についてですが」


 受付嬢が、

 掲示板を指す。


「こちらの依頼は……」


 貼られている内容を読む。


「“派手に倒してほしい”」


「“町の人に見せてほしい”」


「“安全第一”」


「……なんだこれ」


 プロレス興行か。


「……あと」


 受付嬢が、

 小声で言う。


「“覆面の人、指名”って

 書いてあるのも……」


「……やめてくれ」


 完全に、

 イベント枠だった。



 ギルドを出る時。


 背後から、

 声が飛ぶ。


「……おい」


 振り返ると、

 腕組みした冒険者が立っていた。


「正統派の剣士だ」


 その目は、

 値踏みするようだった。


「……見世物で

 英雄気取りか?」


「……そのつもりはない」


「……じゃあ」


 剣士は、

 鼻で笑う。


「戦場で、

 邪魔だけはするな」


「……それは、

 お互い様だ」


 一瞬、

 空気が張りつめる。


 だが、

 剣士は踵を返した。


「……面倒なのが来たな」


 俺は、ため息をつく。


 だが。


 ギルドの外では――


「マスクだ……」

「本物だ……」


 人々が、

 期待の目で見ていた。


「……参ったな」


 マスクの目元が、

 わずかに光る。


 期待されるほど、

 厄介になる。


 それが、

 この町でのルールらしい。




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ