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第14話 門番は、最初に現実を疑った


 ――街の門の前。


 石造りの城門。

 行き交う商人と旅人。

 ごく普通の、町の朝。


 そこに。


「……止まれ」


 門番の男が、俺を見て言った。


 当然だ。


 覆面。

 パイプイス。

 縄で繋がれた盗賊五人。

 盗品の袋。


 どう見ても、説明が要る。


「……これは」


 門番が、言葉を選ぶ。


「……どういう状況だ?」


「……盗賊を捕まえた」


 簡潔に答える。


「街道で襲われた」


「……一人で?」


「……一人でだ」


 門番の視線が、

 盗賊たちに移る。


「……反論は?」


「……ありません」


 盗賊の一人が、

 涙目で頷いた。


「……そっちは?」


 門番が、

 俺の持つパイプイスを見る。


「……凶器?」


「……たぶん」


「たぶん!?」


 声が裏返った。



 門番は、しばらく黙り込んだ。


 その後、

 横にいた同僚に小声で言う。


「……おい」


「……ああ」


「……例の噂の、

 覆面じゃないか?」


 俺の耳に、

 はっきり聞こえた。


「……噂?」


 門番が、恐る恐る聞いてくる。


「……ゴブリンキングを

 一人で倒した、

 っていう……」


「……ああ」


 否定は、しなかった。


 すると。


 門番が、

 深く息を吐いた。


「……分かった」


 俺を見る。


「このまま、

 詰所まで来てもらう」


「……分かった」


「……逃げないな?」


「……逃げない」


 盗賊たちが、

 一斉に頷く。


「逃げません!!」


 いや、

 お前らに聞いてない。



 詰所に入った瞬間。


「……何だ、これは」


 別の兵士が、目を丸くした。


「……説明しても?」


「……頼む」


 俺は、

 簡単に事情を話した。


 街道で襲われたこと。

 盗賊を捕まえたこと。

 人間相手には殺していないこと。


 説明が終わる頃には――


「……正気か?」

「……いや、

 正気じゃないのは

 戦い方だ」


 兵士たちが、

 ヒソヒソと話し始めていた。



「……で」


 責任者らしき兵士が、

 腕を組む。


「報奨金だが……」


 盗賊たちが、

 びくっとする。


「正式に引き渡してくれれば、

 規定通り支払う」


「……助かる」


 正直、

 それが一番ありがたかった。


「ただし」


 兵士は、俺を見る。


「身元不明のままだと、

 街に入れるわけにはいかん」


「……だろうな」


「名前は?」


「……マスク」


「……本名は?」


「……それだけだ」


 沈黙。


 兵士は、

 しばらく俺の顔を見ていた。


 ――覆面を。


「……分かった」


 そして、

 ため息交じりに言った。


「仮登録だ」


「……仮?」


「問題を起こさない限り、

 街に滞在していい」


「……ありがたい」


「ただし」


 指を立てる。


「目立つな」


 俺は、

 無言でマスクを指差した。


「……無理だな」


「……だな」


 兵士が、

 苦笑した。



 盗賊が連れて行かれ、

 俺は詰所を出る。


 その瞬間。


「……ねぇ」


「……あれ、何?」


「覆面……?」


 人々の視線が、集まる。


「……あ」


 誰かが、声を上げた。


「ゴブリンキングを倒した、

 覆面って――」


「……本当だ!」


 一気に、

 ざわつきが広がる。


「……早いな」


 噂は、

 本人より先に走るらしい。


 俺は、

 空を仰いだ。


「……面倒だ」


 だが――


 ポケットの中の、

 少しだけ重くなった金袋。


「……生きていけるな」


 それだけで、

 今日のところは十分だった。


 マスクの目元が、

 ほんの少しだけ、

 照れたように光った。




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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