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第13話 人間相手だと、手加減ができるらしい


 ――街道は、静かだった。


 舗装されていない土の道。

 左右に森。

 遠くに、町の影。


「……意外と、近いな」


 村を出てから半日ほど。

 もらった乾パンと干し肉を齧りながら歩く。


 金は、ない。


「……まぁ、何とかなるだろ」


 根拠はない。

 だが、不思議と焦りはなかった。


 ――その時。


 足音。


 複数。

 森の中から、はっきりとした悪意。


「……はいはい」


 俺は、立ち止まった。


「出てこい」


 数秒後、

 草むらから現れたのは――


「へぇ……」


 ボロい装備の男たち。

 剣、短剣、棍棒。


 五人。


 ――盗賊だ。


「そこの覆面さんよぉ」


 一番前の男が、ニヤつく。


「随分と目立つ格好だな?」


「……だろうな」


「悪いが、

 持ち物を全部置いていってもらう」


 俺は、一瞬考えた。


 ――逃げる?

 ――交渉?


「……先に言っとく」


 俺は、ため息をつく。


「金は、ない」


「は?」


「食料は、少しある」


 男たちが、顔を見合わせる。


「……じゃあ、

 そのマスクが高そうだな」


「……取れない」


「外せばいいだろ」


「……外れない」


「……は?」


 このやり取り、

 村でもやったな。



「まぁいい」


 男が、剣を構える。


「力づくで――」


 そこまでだった。


 体が、勝手に動く。


「……っ!」


 踏み込み。

 間合い。


 だが――


「……あ?」


 力が、抜けた。


 いつもなら、

 ゴブリン相手にやっていた踏み込み。


 だが今回は――

 相手を吹き飛ばさない。


「……なに?」


 俺の拳が、男の腹に入る。


 ドン。


 重い音。


 だが、男は吹き飛ばない。


「がっ……!?」


 その場に崩れ落ち、

 息が詰まった様子で転がる。


「……効いてるが、

 死んではいない」


 自分で、自分に驚く。


「……?」


 次の男が、後ろから斬りかかる。


 腕を取る。

 捻る。


「――っ!」


 関節が極まる手前で、止まる。


 骨は折れていない。


「……なるほど」


 俺は、はっきり理解した。


「……魔物と、人間は……

 区別されてる」


 マスクが、

 勝手に加減している。


 殺さない。

 壊さない。


 無力化だけ。


「……余計なとこ、

 気が利くな……」



 数分後。


「……」


 盗賊五人。

 全員、地面に転がっている。


 意識はある。

 動けない。


「……な、なんだお前……」


 一番最初の男が、

 震えた声で言う。


「……マスクだ」


「……」


 沈黙。


「……なぁ」


 俺は、縛りながら言った。


「街は、

 この先で合ってるか?」


「……あ、ああ……」


「……よし」



 縛り終えた盗賊たちを見て、

 俺は、少し考えた。


「……金、無いんだよな」


 盗賊。

 盗品。

 街。


「……」


 ひとつ、

 いい案が浮かんだ。


「……お前ら」


 盗賊たちが、びくっとする。


「このまま、街まで行くぞ」


「……は?」


「お前らと、

 盗品ごと、だ」


「な、なんでだよ!?」


「……報奨金、

 出るだろ」


 盗賊たちが、

 絶望した顔をする。


「……安心しろ」


 俺は、淡々と言った。


「逃げなきゃ、

 余計なことはしない」


 少し間を置いて。


「……あと」


 視線を落とす。


「人間相手に、

 殺しはしない」


 それだけで、

 十分だった。



 こうして。


 俺は――


 盗賊五人を縄で繋ぎ、

 盗品の袋を肩に担ぎ、

 堂々と街道を歩く覆面男

 になっていた。


「……これ、

 通報されないよな……」


 遠くに見える、町の門。


 マスクの目元が、

 わずかに光る。


 次は、街だ。


 面倒事の匂いが、

 すでにしていた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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