第11話 パイプイスは正義の武器である(女神談)
――森の奥。
木々の隙間から、
異様な気配が現れた。
「……来たな」
俺は、足を止める。
ゴブリン。
それも、さっきまでとは違う。
数は二十以上。
しかも――
「……でかいのがいる」
群れの奥から、
頭ひとつ抜けた存在が歩み出る。
筋肉質な体。
歪な兜。
手には、粗悪だが巨大な斧。
「……ゴブリンキング、か」
自然と、名前が頭に浮かんだ。
マスクの鑑定能力が、
勝手に仕事をする。
――【ゴブリンキング】
――統率能力:高
――危険度:村壊滅クラス
「……笑えねぇ」
だが、背後には村がある。
逃げ場は、ない。
⸻
「ギィィィィ!!」
キングの咆哮を合図に、
ゴブリン軍団が一斉に動いた。
「……来い」
最初の一体が飛びかかる。
俺は――
「ショルダータックル!!」
真正面から、吹き飛ばす。
二体目、三体目。
「連続エルボー!!」
肘が、吸い込まれるように当たる。
だが。
「……多い!」
四方から、囲まれる。
ここで――
「……そういや」
女神の声が、脳裏をよぎった。
『パイプイスの召喚、短縮しました!』
「……今かよ」
思った瞬間。
カンッ!
乾いた音。
俺の手に、
どこからともなくパイプイスが現れた。
「……出た」
迷っている暇はない。
「正義のイスショット!!」
振り下ろす。
ゴブリンの武器が弾き飛ぶ。
「ギィッ!?」
「……剣より使いづらい」
だが――
効く。
イスは壊れない。
むしろ、振るたびにキラッと光る。
「……誰だよ、
これを正義の武器にしたやつ」
言うまでもない。
⸻
数が減る。
だが、
最後に残ったのは――
「……キングか」
ゴブリンキングが、
斧を振り上げる。
重い。
一撃でも食らえば、
ただでは済まない。
「……真正面は、無理だな」
俺は、息を吸う。
その瞬間。
頭の中に、
新しい動きが流れ込んできた。
踏み込み。
体重移動。
相手の勢いを、利用する。
「……おいおい」
自然と、口が開く。
「ブレーンバスター!!」
突っ込んできたキングの体を捉え、
持ち上げ――
「……うおおおお!!」
地面に、叩きつける。
ドォン!!
地響き。
だが、まだ立つ。
「……しぶといな」
キングが、再び斧を構える。
俺は、イスを捨てた。
「……次で終わりだ」
低く構え、
一気に距離を詰める。
「スピアァァァ!!」
全体重を乗せた突進。
ゴブリンキングが、
吹き飛び――
倒れた。
⸻
――静寂。
森に、
風の音だけが残る。
「……終わった、か」
肩で息をしながら、
周囲を見渡す。
動くゴブリンは、
一体もいない。
マスクのツノが、
ゆっくりと消えていった。
⸻
村に戻ると。
「……おかえり」
最初に声をかけてきたのは、
リリアだった。
「……戻った」
次の瞬間。
「うわぁぁぁ!!」
「マスクおじちゃーん!!」
子供たちが、駆け寄ってくる。
「かった!?」
「ゴブリンいなくなった!?」
「ああ」
短く答える。
その後。
「……待て待て」
「ゴブリンキングって何だ」
「そんなの、
普通は倒せないだろ」
村人たちが、
一斉にツッコミ始めた。
「しかも、武器がイス!?」
「途中で出てきただろ、あれ!」
「……俺も驚いてる」
正直な感想だった。
⸻
村長が、深く息を吐く。
「……認めざるを得ん」
俺を見る。
「お前は――
この村の恩人だ」
「……やめてくれ」
そう言いながらも、
拒めなかった。
子供たちが、
声を揃える。
「マスクおじちゃん、
だいすきー!!」
胸が、少しだけ熱くなる。
「……参ったな」
俺は、空を見上げた。
「……女神」
返事はない。
だが。
マスクの目元が、
誇らしげに光った。
――ドヤ顔みたいに。
⸻
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