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第9話 こうして覆面は、村に居候することになった





 ――結論から言うと。


 俺は、村に残ることになった。


「……まぁ」


 村長のガルド爺は、腕を組んで言った。


「ゴブリンを追い払ってくれた恩もある。

 すぐに出て行けとは言わん」


「……助かる」


「ただし」


 人差し指が立つ。


「怪しいことをしたら即追放だ」


「……当然だな」


 この格好で怪しくないわけがない。



「じゃあ、しばらくは

 空き家を使ってください」


 そう言ってくれたのは、リリアだった。


「村の外れですけど、

 屋根も壁もあります」


「……十分すぎる」


 正直、

 路頭に迷うと思っていた。


 それが今は、

 寝床と飯がある。


 ……覆面付きだが。



「ねぇねぇ!」


 その時。


「マスクおじちゃん、

 ほんとにここにいるの!?」


 子供たちが駆け寄ってくる。


「……ああ」


「やったー!!」


 一斉に歓声。


「じゃあさ!」

「名前どうするの!?」


「……名前?」


 そこで、

 嫌な予感がした。


「覆面の人だし、

 “覆面さん”でいいんじゃない?」


「いや、それそのまんまじゃん!」


「じゃあ……

 “マスク”!」


 全員の視線が、

 一斉に俺に向く。


「……それでいい」


 言い返す気力が、なかった。


 ――こうして。


 俺はこの村で、

 **“マスク”**と呼ばれることになった。



 昼過ぎ。


 村の中を歩くと、

 視線を感じる。


 だが昨日と違う。


「……本当に、

 怪物じゃなかったんだな」


「……喋ると普通だな」


「いや、普通ではないだろ」


 半信半疑。


 だが、

 敵意はない。


「……慣れた」


 覆面を被っている限り、

 これが日常だ。



「……マスクさん」


 リリアが、

 少し困った顔で言う。


「村の人たちがですね……」


「……なんだ」


「あなたが来てから、

 ゴブリンの数が

 増えてる気がするって」


「……」


 胸が、少しだけざわついた。


「……偶然、か?」


「分かりません」


 リリアは正直だった。


「でも、

 森の奥が騒がしいって」


「……そうか」


 耳を澄ます。


 遠く――

 確かに、何かが動いている。


「……厄介だな」



 その夜。


 空き家の中で、

 一人、天井を見上げる。


「……居候、か」


 人生で、

 何度目だろう。


 でも。


「……今回は、

 追い出されてないな」


 それだけで、

 少しだけ――救われた。


 マスクの目元が、

 静かに光る。


 可愛くも、

 怒ってもいない。


 ただ、

 そこにある。



 そして。


 森の奥で。


「――ギィ……」


 低い声。


 複数。


 昨日より、

 確実に多い。


 何かが、集まっている。


 マスクの五感が、

 嫌な予感を告げていた。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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