第四章
「おべんっとおべんと~♪」
相変わらずの朱はご機嫌さんである。
もうお昼。みんなは早々と箸を進めている。
「なんかさ、あずちゃんお弁当箱ちちゃくない!?」
そりゃあ・・・スポーツ部の朱にくらべて少ないのはわかる。
でもそんなに吃驚した目で見なくても・・・。
あなたが異常に多いだけでしょう。あたしが普通・・・だと思う。
「いやぁーこんくらいはないと夜お腹すくってぇー。」
よく見ればあたしのお弁当箱の1.5倍ほどの大きさのものを朱は頬張っている。
小食のつもりはない。まったく。
うごかないからエネルギーをそれほど求めないのだよ。きっとね・・・。
「ふぅーん・・・」
もぐもぐ・・・朱は再びお箸の運動に夢中になる。
だいたい食べ終わるのは15分ほど。ギリギリラインである。
休み時間、3人で集まって色々と世間話をしていた。
窓辺は風があたって夏場でも少しはましになる。
「なんかさー、最近つまんないよねぇ」
「うーん・・・まぁ・・・」
「そう?蓮華はたぁーのしっ」
朱の持ち出した話題に必死になりついていく。
憂鬱なのはみんな同じなのかもしれない。あたしほどでもないだろうけど。
まぁ、大抵こう言うキャラクターとかって幼きころに大きなトラウマの穴が埋まらず鬱になるが、
あたしの場合そんなものない。まったく。
「あっついしさぁーこまるぅー」
「・・・そうだね」
「いやー、でもきっもちいいじゃんっ」
蓮華も朱も、まったく言ってる事が反対だね。
でもそんな二人だからこうして仲がいいのかもしれない。
「もー、さっきから反論ばっかし!」
「しょうがないじゃん。人それぞれ何だし」
「・・・主観」
でも、結局はこうしてギクシャクしだすのだ。
そのあと、何事もなかったかのように笑う二人は、仲がいいのか悪いのか・・・
喧嘩するほど仲がいいというけれど、それがこれなのかもしれない・・・。
「あー、えっと・・・あたし教科連絡に・・・」
「はいはーいっ」
あたしは小走りで階段を駆けた。
うちの学校は旧校舎と新校舎にわかれてるんだけど、職員室のある新校舎はかなり薄暗い。
日当たりが悪いのだと思う。この後者の眺めは・・・廊下はいまいち。
大きなマンションがどんとたっており、ほとんど綺麗なものは見えない。
人が棲んでいると云う存在感だけがあふれ出ている。
「失礼します・・・1年D組の中西です。教科連絡に・・・」
用を済ませたら階段を駆け上って行く。
何故か途中の保健室の前に、身長をはかるアレが置いてある。
誰もいない、静まり返った廊下にあたしだけが取り残されている。
寂しい道に立ち止まってなんとなく身長を測ってみる。高くなってないのは承知で。
・・・っとこんな事をしてる場合じゃなかった。
そろそろチャイムの鳴る時間が迫って切れるかもしれない。