第三章
実は、今回よりも前に一度だけ駿弥を好きになった事があった。
それはまだ幼いころで、幼いなりに頑張っていたが、中学に上がったとたんその気持ちがすでに冷めていた事を自覚した。
席替えをするとき、あんなに隣になれますようにと願っていたのに、
あいつの後ろの席になったのにちっともドキドキしなかった。
いつしかあたしの中で、駿弥はふつうの友達にしかなってなかった。
でも、消えかけてた火が、手を握られたせいでちまちまと再び明かりをともした。
なんだか・・・こんなにきゅうんとなってしまったのは久しぶりな気がする。いつぶりだろう。
次の日、なんだか昨日のあの気持ちを思うと学校もそう億劫でもなくなった。
アンニュイな学校生活が少し楽しい気がしてきた。
「おっはよー」
朱がとことことやってきた。
「あー、おはよ・・・」
やっぱり、学校へ来ると口数が減る・・・。
なんでかしらないけど・・・。喋る気が失せるというか・・・
「ねっ、朱。あのさぁ今日遊べるでしょ?」
「あー、うんいいよぉ」
蓮華も駆け寄ってきて2人で仲良く話している。
2人の笑ったり、はしゃいだりしてるところを見てると・・・エネルギーを是非とも分けていただきたい。
「んーじゃあさー、なにしよっか」
「そうだねー、えっと・・・」
お邪魔虫のあたしはここで退散する事にする。
周りを見渡すが、まだみんな席に着席しているご様子は覗えない。
することもないのでボーっとしていた。
しばらくボーっとして、好きな音楽を脳内再生していた。
すると前方からドサッというよく耳にするが重たそうな音がした。
その音で飛んで行ったあたしの魂が堕ちて舞い戻ってきた。
駿弥である。ここで「おはよう」なんて言えたらいいのだが、あたしはそんなキャラできたつもりはないし、
正直喋りかけてきたら希少価値な無口キャラなわけで。
急に話しかけられたら「・・・はい」しかいえないだめなキャラで前方にいて邪魔な人物に「あーうーあーうー・・・」しかいえない独り言女のはずである。
「おはよっ」
高い声が前方から飛び交う。まだまだ幼いその声は教室の雑音とともに消えていく。
「おい、おいってば」
ざわめく教室には人の声やドタバタという足音・・・物を落とす音。
色々な音が混じり合う。非常に賑やかなクラスだと思う。
「聞けよ、んったく」
頭をちょんちょんとされた。
もしかして今のはあたしに向かって必死で言ってたのか・・・?
「寝てた?目を開けたまま」
「え・・・?ぁ・・・いや」
そしてぽんと両手を叩いて、駿弥はあたしの頭に掌を押しつけた。
「わかった。お前が大人しい理由っ」
「・・・へ?」
「会話が成立しないんだよね」
「あ・・・はい・・・ごめんなさい」
何故かよくわからんが謝ってみる。すると「謝るな」と言われた。
あたしにそれを改善できる自身はさらさらないんだけど・・・弱ったな。
みんなぽつぽつと席に着きだした。あたしも授業モードON。
静かに、前を向く。