第一章
みんなうーんと唸りこんで思い出している。
あたしだったらすぐパッと出てくる。
「27・・・ないくらいかなっ」
幼馴染の蓮華が言った。
ツヤツヤできれいなポニーテールをゆらゆらさせながら言った。
27か・・・ほど遠いかもしれん。
するとひょこひょこと声が聞こえてくる。
隣の席に無断で座り、おさげヘアーの朱が
「あけみは22っ!」
20を切る奴はいないのか・・・。
「あずちゃんはっ?」
あずってのはあたしの名前。苗字は中西。
とりあえず適当に笑ってごまかしておいた。
そしたら「なんだなんだと」前方の席の駿弥がこちらを向いた。
女の子の会話の中に首をはさみこむ。
「俺は24ね」
「あー・・・そうですか」
そして蓮華様に掌を握ってもらうことにした。
痛い痛い・・・掌がつぶされて行くかのよう。
「・・・自重してください」
「え・・・?じちょん?」
さらに掌は強く握りしめられた。
痛みをこらえながらも朱の方へと視線をやる。
どうやら駿弥と一緒に握り合っているようだ。
「あぁ・・・・もういいです・・・」
「ふぅーっ!」
蓮華はくるりと一回転をして見せた。
回って誤魔化すのは別として、右手を握らせるんじゃなかったと思う。
するとこんどは朱が
「握ってっ!」
なのであたしはゆっくりと手を差し出す。
今度は左手ね。まずはあたしから握ってみる。
「あははっ痛くないねぇー」
「・・・うぅっ」
後者は悶える声である。
握力を確かめ合ったが妙に蓮華と朱の差がありすぎる・・・。
きっと、平行に握ってるのか垂直なのかの問題かな。
「えぇー、そう?そんなに蓮華変な握り方したっ!?」
「あ・・・いやぁ・・・はいっ」
んもうっと怒られた。
ほんとですよ。握り方が酷いです。
っとここで予鈴が鳴る。
6時間目の授業・・・今日は特別に部活は無し。
うちの部だけだと思うけどね。
普通、吹奏楽部がこんなにすんなり休日にしちゃっていいのかね・・・?
それぞれ席に着いた。
もうほとんどのひとが夏服。
本当は13歳になるまで冬服で通そうと思っていたけど、あまりにあっついので諦めた。
13歳になるまであと1週間を切ったこの日である。
つまらない授業を終えると一同起立、礼。
そして帰りの準備をして押し出されるかのように一同は教室から流れ出た。