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第十八章

お弁当の時間ってなんだか楽しみでならないよね。

お腹がもうペコペコなんだけど、4分の1ほど食べると満腹に近づいてくるのはあたしだけだろうか・・・。

むりやり身体に流し込むが、家に帰る前にお腹がすく。なんでだろうねぇ。


「わぁーあずちゃんのおべんと美味しそぅ~」

「ありがとう・・・」


朱は何か物欲しそうにあたしのお弁当を毎日のぞいてくる。

そんなに何度もおんなじ台詞を吐かなくてもいいのに。

いつか自分で作ってみたいとは思うけれど・・・朝が弱いので無理。絶対。


「なぁーんかいっつも卵焼きはいってるじゃぁん。好きなのぉ?」

「うーん・・・普通かな」


言われてみれば毎日卵焼きはいってる。

親の趣味なのかな・・・。黄色を入れると明るくなるしね。

朱のお弁当は・・・いつもフルーツが添えてあるよね。


「そうなんだよぉ。妹たちが果物大好きだからついでに朱も入れてもらってるの」


妹・・・いいなぁ。うちの家には弟しかいないしなぁ。

妹がいたら着せ替え人形にして遊んであげるのに。

洋服着せたり・・・髪の毛括ってあげたり


「それがぁ、最近自分で髪結ぶようになっちゃってぇ・・・それにぃ、服の趣味も違うから困るんだよねぇ」

「そっか」


妹のいるお姉さんも大変なんだなぁと思う。

さっきから水分を一滴(ひとてき)も口に含んでないので喉が渇いてきた。

牛乳牛乳・・・・・・


「あー、朱も牛乳のーもぉっ」

「んぎゅ・・・?」


うちの学校は・・・牛乳はパックじゃなくて瓶。

瓶の牛乳・・・周りの学校はほとんどがパックらしいけど・・・。

これがまた開けるの大変で・・・中々開かない。

無理に引っ張ってあいたときにその白い液はまだ新しい制服を悪臭とともに染める事になるだろう。


「どぉしたのぉ?あかない・・・?」

「・・・みたい」


朱は結構ポコッと開けた。これって瓶が悪いんですよね・・・?そうですよね。


「貸してみ、俺があけちゃる」

「え・・・」


またしても駿弥が絡んできた。

朱の居る前で・・・ちょっとは自重してほしいかもしれない。

朱が見てると駿弥との時間もあまり楽しく感じられないから・・・。


「ほーら、貸してよ」

「いやぁ・・・いいよ」


なんなら牛乳は飲まなくていいかもしれないなぁ。

勿体ないけど、今日は牛乳なしで頑張ろうか。

いや、他の人に開けてもらえば別になんてことないんだ。


「あけてあげるって言ってるのに」

「いいって言ってるのに・・・」


こんなこと言うと、もうこっちを向いてくれなくなっちゃうかもね。

心のブレーキくらいかかるものなんだよ。ちゃんと。


「解った、ちょっとまった」

「え・・・」


プカッ ふたのいい音がした。

開けた瓶を駿弥はあたしの机の上に置いた。


「それ、あげる。飲んでいいよ。で、お前の右手のそれちょうだい」


駿弥がくれたのは開けてくれた牛乳。

元は駿弥のものだった牛乳。

もちろん飲みかけなんかじゃない。

いらないのに・・・もらったら・・・心の整理つけようと思ってるのに・・・。

邪魔をしないで。


「俺、牛乳無いんだけど・・・それちょうだいって」

「あたし、牛乳いらない」


牛乳を駿弥に返した。だって・・・。

だって朱のせつない顔がすぐ目の前にあるから。

あたしたち、なんでこんなに近くの席なんだろうって思った。

もっと離れていれば他の人に開けてもらえたし、

朱と駿弥の事もきにならないし、もとはと言えば手を握り合うこともなかったはずなのに・・・。


「・・・じゃあ・・・これ俺の牛乳」


駿弥は何事もなかったかのようにいっぱいだった牛乳を飲みほした。

心の中であたしは駿弥に謝った。

ここでは言えないけど・・・ごめんなさい。本当にごめんなさい。

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