第十六章
「え・・・あずちゃんって新田くんのこと好きやったん・・・?
昔からよく喋ってたから幼馴染なのかと思っとった・・・。」
「幼馴染なんて・・・」
昨日なんとなくうすうすわかってたんだ。
朱もあたしと同じ人が好きだったんだって・・・。
あたしと駿弥が何かあれば耳を傾けてくるのもそのためだったとわかった。
「そうなん・・・私に相談されてもちょっと困るんやけど・・・」
「・・・だよね。あ、このことは内緒だから」
縁ちゃんの口が堅いのを解って言った。
この前、縁ちゃんの好きな人を教えてもらった。
だから縁ちゃんが一番伝えやすかった。
「うーん・・・あずちゃん、積極的モードになっちゃえ!」
「え・・・」
あたしにそんなモードなんて内蔵されていない。
でも、あたしが頑張ったって今のあたしと同じ気持ちへ朱を落とすことになる。
「でも・・・とられてもしらんよ?」
「・・・・・・」
ここで諦めた方がいいのかな・・・と思う。
あたしは何も言わずに頭を下げて教室に戻った。
でも、諦める・・・諦められる自信がない。
こんなことで人の心がまがってしまうならこんな気持ちにはならなかったはず。
そう思う。
「あー、やっべ・・・音楽の教科書ないわー・・・おい、あず!教科書っ」
席に着けば駿弥があたしの教科書を求めてきた。
・・・ここで、教科書を貸してしまっていいのかな・・・。
朱はあたしの隣の席だし、絶対わかってしまう。
でも、ここで無視をしては嫌われてしまうんだ。
「あずちゅわーん、聞いてるの・・・?」
「あ・・・うん」
「教科書」
朱はものすごいいきおいで引き出しの中をかきまわしている。
あぁ、これはあたし用無しだな・・・そう思ったからゆっくりと引き出しの中を探検することにした。
すると朱が
「はいぃっ教科書ぉ!」
「ぇ・・・・・・あ・・・サンキュ」
「・・・・・・」
仕方がないよね。あたしの気が弱いからいけないんだ。
こうやっていても報われない事はちゃんとわかってるけど・・・。
自分の意思で走っても何かを失うことはわかってる。
朱は大切な友達なのに、その邪魔なんてできっこない。自分が良いほうに進んでまで・・・。
「けちんぼあーず」
「え・・・」
最後に駿弥がそう言った。
大丈夫。まだ・・・まだあたしと朱は釣り合ってるのかもってあんな言葉で安心する。
でも、これからどうなるかなんてわからない。
とりあえず、今のままでいようと思ってる。
「あ・・・えぇっと・・・見る?」
「ありがとぉ~」
朱だってあたしの事が嫌いではないみたい。
教科書を差し出すと普通に一緒に見ようとしてくれてる。
でも、ただ・・・自分の方が上に立ちたいみたい。
「なぁ~んっか・・・駿弥ってあずをあてにしてるよねぇ」
「えっ・・・?」
「いいよねぇ、そんなのって」
「あの・・・やっぱり朱って・・・駿弥が」
「な、なな何・・・?えぇっとぉ・・・音階書かないのっ?ね~ぇ」
みるみるうちに朱はカァっとなって・・・誤魔化そうとしてる。
そういうところ、とても可愛いんだとおもう。
ほほえましいけど、やっぱり勝てる気がしてこないのも確かだな。