第十三章
「ふあっ・・・!?えとー・・・おもしろいよねっへへん」
朱は頑張って誤魔化しているのだろう。でも見え見え。
なんでこんなに解りやすいのかな。定番だけど、漫画がさかさまになっている。
「さかさまにしたら新しい発見があるんだよぉー」
「・・・・・・」
冷めた。やっぱり今の空気じゃ無理。時間の問題・・・いつかは吹きだす。
「駿弥・・・大丈夫?」
「え・・・あっ・・・何・・・!?」
いつもはひょこひょこ顔を出してくるくせに、どうしてだか駿弥もおかしい。いつもと違う。
あたしの知らないところでいったい何がおこっていたのか・・・・?
「ごめ・・・俺・・・無理だ。今日は帰る」
「えそんな、待って・・・1人で帰るの?」
「・・・うん」
「そっか」
駿弥は暗い顔のままうつむいて――部屋を出ていった。
なんだか急に胸が苦しくなった。あたしも一緒に帰ればよかったかなぁとか。
好きな人の事を知ろうとはおもうけど、努力なんてしてなかったなとか。
結局あたしがここにいることは駿弥にとって関係ないんだろうなとか・・・。
「・・・どうしたんだろうね」
「そ、そうだね・・・知らないっ。さ、続き見るねぇーっ」
なんだか寂しいなぁって久しぶりに思った。
今までずっと近くに居たけど、もう一度あんな風になる日が来るのかなぁって。
明日はなんとなく話せない気がしてきたよ。あたし、カンとかそういうのあんまりあてにならない人間だけど。
「駿弥となんかあったの・・・?」
触れない方が良かったかもしれない。
だけど気になって仕方がなかった。
「んー、特に何も・・・忙しいってねぇ」
「そうなんだ・・・」
いや、そんなことですむはずはない。
あの動きは異常だった。この数年の付き合いの中から考えて。
「お邪魔しました」
結局、何も聞き出せなかった。まぁ、部外者が知るようなことでもないだろうけれど・・・。
知りたくなるのは普通だよね・・・。いつも笑ってくれる人が暗いなんて。
家を出る前に解ったんだ。何か自分腕に足りないものがあることを。
「あっ・・・・・・明日でいいかな」
また元通りに戻っていたらね・・・。
そしたら、問い詰めてやるんだ。さっきのことも。盗まれたものも。