第十一章
1時間目が目前に迫ったこの休み時間・・・。
ほとんどの生徒は自分の領域にこもって廊下へ躍り出たりはしない。
限られたスペースの中で、男の子という生き物は大暴れしているわけなんだが・・・
「でさ、漫画の話よ。明日じゃなくてー・・・今日でもいいけど。俺の家持ってきてよ」
「え・・・駿弥の家!?」
ちょっと大きな声を出しすぎたと思う。此処では大分大人しいキャラのあたしがこんな声を上げるとは・・・。
でもみんなそれに気付いていないようだった。
「うんー。取りに行ってもいいよ?あー、でも持って帰るの面倒だし、持ってきてよ」
「雑用係ですか・・・?」
うれしい半面、雑務を押しつけられるとは・・・。
返す時くらいちゃんと届けてくれるのかな?なんてね・・・。
そんな事を言っていると、今日も相変わらず馬鹿なオーラを振りまいている朱がやってきた。
「ねぇー、何の話ぃー?」
「あー、こいつに漫画持ってこいって言ってんの。あの漫画すっごい面白かったし」
「漫画ー?重いよ、それは・・・いいことおもいついたっ!」
朝から一時間目分のエネルギーをよく使いきるなぁと思う。
平日は憂鬱気味で沈んでいるのに・・・他人はこんなに違うなんて。
そう、夜中はまれに鬱だけどエンジンがかかるのは寝る直前なんだけどな・・・。何故だろう。
「今日は漫画大会やろぉっ?えっとー、会場は駿弥の家!か・・・あずちゃんの家」
「あ、ごめん、あたしの家今日親いないから無理」
あたしの両親は共働きだから。
でもそんなに大変ではない。母親は夕方には帰るから晩御飯なんて作らなくても出てくる。
父親は日付の変わる前くらいかな・・・。
「俺んとこも。妹風邪ひいてるから」
「じゃあ、どうしてあずちゃんに持って来いってぇー・・・」
「いや・・・玄関前なら問題ないと思う」
「ふぅーん・・・そういうことだったんだー・・・なぁーんだ」
すとんと肩を落として、朱はくるりと半回転してこちらを向き、また半回転で戻った。
「しょーがないっ・・・それならばー・・・朱の家でやる?漫画読むの」
「部活大丈夫なのかな・・・?2人とも」
「俺はいける今日くらい休んだって大丈夫だろうよ」
なんだかあっさり今日の予定は決まってしまった。
どうしてかな・・・本当は駿弥の家に漫画を持っていくだけだったのに。
漫画を皆で持ち寄って読むことになってしまった。
もう中学生なんだし、遊ぶ時間もまともにない・・・。
というか、みんな勉強しないのかな(あたしはやる気もないけれど。)
「うんっ。じゃあ、各自朱の家集合ねぇー。あぁ、そうそう・・・別にふたり一緒に来なくたっていいのぉ。別々でも構わないからぁ・・・」
「一緒に来てほしくないのか・・・?」
「んー・・・んふふっ。なんか今から楽しみだなぁ~」
あたしは駿弥の顔を見た。意外と普通だ・・・。
だけど今のは誤魔化しに違いない。きっと何かあるのだ。そんなカンがなんとなく浮かんだ。