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JPYEUX

今日はちょっと心がはずんでいるのだ。

誰だって、アラフォーの時期じゃなけりゃちょっとくらいは興奮するはずのこの日。

朝起きたら、弟だけがその祝福の一言を告げてくれた。

親はきっと夜になってからだろうと思う。

待ち合わせの場所にも早く着いた。だって今日は特別だからそれなりに早起きをしたのだ。

自らの力で7時ぴったりに起きるなんて・・・自分でもどうしたのかと思うくらいだ。


「あ、あずちゃんっ!おめでとーっ」


友達の中で一番最初にその言葉をくれたのは蓮華だった。

今日も一段と黒いポニーテールが輝いて見える。


「今日プレゼントもってくかんねっ!まってるんだよっ」

「解った。ありがとう」


結構ピークに近い興奮だったんだけど・・・。

こんなことを言われた。


「もー、せっかくの日なのにそんな暗い気分でいないでさっ、もっとプアァ―――っとなっちゃいなよ」


たしかに最近テンションが常に低いのは自覚してる。

なんだか疲れるんだもの。体力がついていかないって。


「あ、あけみんだ」


朱はいつのまにそんなあだ名を・・・。

とりあえずむこうのほうから朱が寄ってくるのが分かる。

まだ冷たい風があたしたちの頬をゆっくりとつついてくる。

正直そろそろ温かくなってほしいと思ってる。衣替えには厳しい気温。


「あっけみ――ん!今日ね、あずちゃんね―――」

「あっ、そっかぁ。おめでとー」

「うん・・・ありがとー」


少し身体の奥がぽわぽわするね。

でもそんなに親しい友人がいるわけでもないので、このくらいでもう終わってしまうのだ。

あとは学校に行けば会える友達もいるが・・・覚えてもらえない人もいる。


「じゃ、しゅっぱつっ!」


重たい鞄をむりやり肩にかけてやって、みんなで移動。

学校が近いだけよかったし、助かる。

他の生徒たちも次々と校門に吸い込まれて行く。


「あ、桃子ちゃんじゃんっ!」


蓮華は荷物の重さなど気にしないかのように駆けていった。

桃子ちゃんはいつものようにくねくねとしながらこちらへ来る。


「あずちゃんおめでとー」


すべての台詞が桃子ちゃんは棒読みである。

これも一つの萌え要素として蓮華様は気にいってるらしいが・・・。

あたしは2次元のが・・・いや、何でもない。


「なんかもう抜かれたってのがやだなー。やっと並んだと思ったのにー」


ははは・・・逆にいえば早くあたしは抜きたかったさ。

この時期のせいで貴女たちにはチビ扱いをされるハメになってますがね・・・。


校舎の階段を上る。みんな楽しそうに会話を交わしているが、そんな余裕はまったくない。

荷物が重たすぎて息が苦しい。どうして1年は最上階なのだ・・・?

まぁそれはいいとして・・・桃子ちゃんとは教室まで分かれた。

違うクラスだからね。朱と蓮華とあたしは背の高い順で教室に入った。

みんなそこまで身長差は無いのだが、蓮華に比べて若干朱が小さいしほとんど大差は無いが朱の方があたしより大きい。

これは他の2名が大きいだけであってあたしは平均的な身長のつもりなのである。

(実際ちょうど一歳年下の平均身長だということは内緒である)

原因はきっと夜中まで起きてるからというのはよくわかっている。運動をしないのも。


「あ・・・あずちゃん・・・おめでとうっ」


あまりクラスでも接点の無かった菜々美(ななみ)さんが話しかけてきた。

あたしは・・・菜々美さんにおしえた覚えは無いんだが・・・。


「えっとぉ・・・あずちゃんプロフィールにかいてくれてたでしょ?」

「あ、そっか。そうでした。ありがとうございます」


何故だか知らないけど――堅苦しいと自分でも思うが接点の無い奴にはほとんど敬語で話す。

というか、自分から人によってかないので話す事もまずないが。

それだけを告げると菜々美さんは教室の外へと姿を消していった。

なんだったんだろう・・・あれは。


「ねぇ、おめでとうって何?」

「ぅわっ・・・!」


まったく気付かなかったが、前方の席には当たり前のように駿弥様がすわっておられた。

きゅうに顔を出してきたもんで、かなりの動揺・・・唯でさえ焦るのにね。

でも中々自分では・・・


「えっ、知らないのっ!?今日はあずちゃんの誕生日なのにっ」


これまたひょこひょこと顔を出してきたのは自慢の髪をゆらゆらさせ、駿弥の顔の前に人差し指を突きたてた蓮華だった。


「え・・・あ・・・何?そうなんだ。とりあえずおめでとう。なんかいる?」

「いや・・・いらないです」


引き出しの中をごそごそとしているが・・・いらない。

駿弥の机から何がでてくるか・・・考えるだけで恐ろしいと思うのはあたしだけ?

すると蓮華がぽんと駿弥の肩を叩いて・・・


「あんたは何もあげなくていいのっ蓮華がちゃんとプレゼント用意してるんだからっ!

1番すごいのを蓮華がプレゼントするのにライバル増えちゃたまんないってば」


そう言って駿弥の頭をグーで叩いていた。

「ひぃ」とかいう悲鳴もあげていた。

じゃあ蓮華のプレゼントには期待かなぁ。


「いやぁ――でもって大したことはないんだけどねっ。でも、あずちゃんに似合うように

選んだ自身はかなりあるからねっ。大事にしてよ~」

「うん」


その会話を、そとからずっと眺めている誰かの視線があたしの後頭部に直撃しているのがよくわかった。

でも振り向けば・・・お互い凝視し合う事になってしまう。

そんなの気不味いので、何も知らんかったふりをして蓮華と笑い合っていた。




そして時間は過ぎて昼休みの時間。

先生に用があって、校舎中を走り回っていた。

職員室に居ないと云われてはあの先生の居る場所なんて想像もつかない。

やっぱり先生は見つからず、時間は過ぎてぬるぬると退散するしかなかった・・・。


そして再び先生探しをしたのは掃除時間。

これまた職員室にはいらっしゃらないと聞いた。

いろんな先生や通りすがりの知り合いにも聴いたが・・・みんな知らないと云う。

こんなに忙しそうにあたしが廊下を走っていたら気持ち悪いのはよくわかる。


「・・・何やってんの?」

「えっ・・・先生に用事があって」


振り向くと駿弥が不思議そうにこちらを見ていた。

薄暗いこの校舎、人間はほとんど必死に掃除をしていたと云うのに・・・。


「さっきからずっと探してんでしょ?」

「ぁ・・・知ってたんだ」


どこからそんな情報を持ち出したのかよくわからない。


「太一があずが頑張って校舎をあばれまわってるって聞いてさ。

キャラに合わないなーと思って」

「・・・そう」


ざわめく生徒の声が頭上から降り注ぐ。

上の階ではせっせと掃除が行われているのだろう。

休み時間と並ぶくらい騒がしい時間。それが掃除時間。


「みつからないんだろ。手伝ってやろうか・・・?」

「え・・・」


駿弥にしては気が利きすぎてる・・・しなんか不気味で気持ち悪い。

いったい何があったのか。


「いや、何もないけど・・・なっ、なんか今日誕生日なんだろ?

だったら今日の主役は少しくらい楽してくれたって・・・」

「あー・・・そう・・・そうなんだ」


なんだか無理矢理理由をつけてやった。みたいな言い方だった。

確かに今日の主役はもっとのんびりと過ごしたいものです。

そんな理由はもう通じない。


「でっ・・・国語の先生探すんだろ?」

「うん」


痛いと云うほどぎゅーっと手首をつかまれた。

こんなに力強かったのかな・・・?この前手を握ってもらったときはこんなに・・・。まぁいいや

かなりのスピードで階段を上って行く・・・これじゃいつかこけそうなんですけど。


「あの先生、4階をよくうろついてるらしいからさ」

「あのー・・・もうちょっとゆっくり・・・」

「やだ」


ちょっと息が切れかけ、足も若干痛むが、無事に4階についた。

この階はわりと静か。ふたりの足音がしんしんと響き渡る。


「いないのか・・・?」

「あのぉ・・・そろそろ手を」

「・・・」


なんだかとても恥ずかしいし話せる空気にならない・・・。

せめて今握っている右手だけでも離してもらいたいんだけど・・・。

どうやら聞こえなかったらしい。

でももう一度言う勇気は無い。

そのまま走っている。あんまり頑張りすぎると怒られる気がするんだけどなぁ・・・。


「あ、いた!」

「あ・・・ほんとだ」


その女教師は書類を両手に抱え上げて歩いている。

間違いなく国語の先生だと認識できる。

廊下に響く足音に先生が振り返った。


「先生、えっと・・・これを・・・」


用を済ませ終わると元のスピードで還って行く。

先生と話をしている間も駿弥があたしの手を離すことは無かった。

階段を下りるのはちょっと恐い・・・このスピードじゃ・・・


「あっ・・・!」

「うわぁっ・・・」


案の定、転びました・・・。

もうちょっと自重してスピードを落としてください。


「ごめん、俺引っ張りすぎたか・・・な」

「・・・」


手を握ってくれていたおかげで顔面からの衝突はまのがれた・・・と思う。


「ごめん、大丈夫・・・?ごめん」

「あ・・・いや、大丈夫」


よいしょっと・・・立ち上がるとじゃっかん膝の皮がむけていた。

ヒリヒリするがそれほどの怪我ではない。


「ごめん・・・ほんっとに大丈夫か?なんなら保健室に・・・」

「保健室・・・御決まりなんだな」


いやぁ・・・痛かった。

なんだか細い針でチクチク刺されてるみたいだ。

でも少し心配してもらえたっていうのが、なんとなく嬉しかったかな。


「今度はゆっくり行くから、ごめんよ」

「いいよいいよ」


あの日よりは優しくぎゅっと右手を握ってくれた。

だんだん生徒のざわめきも静まってきたのはそろそろ掃除は終わりだというあいずだとおもってる。

でも、やっぱり手を握られるのは・・・胸が飛び出そうになるくらいに恥ずかしい。


「このことは内緒だからなっ、誰にも。」

「どうして・・・?」

「なっ・・・なんとなくだって。あの後、すっごく俺ややこしいことになったんだからなっ」


あの後というのは、きっと先日の授業に遅れたときに

なんとか怒られずに済んだ件だと察した。

あたしだって朱に問い詰められたいい気分ではなかったさ。半分はね。


それにしては今日、駿弥がやけにてをにぎってくるのは何故だろう・・・。

これもまた白昼夢だったりして・・・恐いなぁ。

ということはまたみんなあたしを置いてホームルームとかって・・・。


「また夢でも見てんのか?んなわけねーよっ」


教室が迫ってくる。

するとさっきまできつかった駿弥の手がパッと離れた。

さすがに教室の中までは恥ずかしいよね。


何事もなかったかのように教室の時間は回っていたけど、家に帰るまであたしの脳みそは真っ赤だったと思う。

なんだか、この歳はいい歳になりそうな予感がしてたまらなかった・・・。

もう少しだけ、もう少しだけ・・・この学校の校舎が広かったらよかったのに。

そう思ったのはこれが初めてかもしれない。

私が今日、たまたま誕生日だったので書かせていただきました。

あまり話は分けたくなかったので続けて描いてみましたが長くなっちゃいましたね・・・。

最後はもうやっつけって感じです。ごめんなさい。


誕生日の日に、好きな人と良い雰囲気になれたらやっぱり嬉しいですよね。

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