ステラ・マリス ep9-シオンの反撃-
シオンたちは、ついにコアを見つけ出し、転送に成功する。しかし、ヘリオス団の現場指揮官・マトメが動き出す。星を救うために動く3人に、残忍な現実が牙を剥く――!
「星のコアを、渡すもんか――!」
シオンの叫びが響く。
目の前には、黒衣の集団――ヘリオス団の現地管理者マトメとその部隊。マトメは黒いマントを翻し、にやりと笑った。
「言ったろ? 渡さねえと、力ずくで奪うだけだってな」
彼の指先が合図を出す。部下たちが武器を構え、じりじりとシオンたちに迫る。
「トモキ、カロン、準備できてる?」
「こ、こわいけど……やる、やるよぉ……!」
「問題アリマセン、シオン様。作戦通りに――開始デス」
カロンの目が赤く光り、隠していたポーチを開く。
――それはトモキの特製発明、「錯乱音波デコイ」。
「いけっ、“光る音する動くけど超役立たずバクハツくん・Mk5”!!」
ぽんっ!
地面に放たれた金属球が、突然強烈な光と耳障りな音を発して跳ね回り始めた!
「な、なんだこりゃ!? 光ってるぞ!」
「音が……耳がァァッ!」
マトメの部下たちはパニックに陥る。その隙に、シオンたちは、森へと飛び出した。
「――こっち!」
シオンが案内する先は、星詠みで感じた“星のコアの共鳴”が最も強かった場所。
「まさか、こんな近くに……」
青く輝く結晶の奥、そこに確かに“コア”があった場所。
「カロン、お願い!」
「了解デス。コアの熱源パターンと一致。転送保護フィールドを展開シマス」
カロンが腕から展開した光の楯が、コアを包み込む。
「ふざけんなぁぁぁ!! どこ行きやがった!!」
マトメの怒号が森に響いた。追撃はすぐそこだ。
「さすがに……もう隠れきれないね」
「じゃあ……!」トモキが震える声で言う。「“最後の手”を……!」
トモキがポーチの中から、最後のアイテムを取り出した。
「これはパパと作った“転送ビーコン”。失敗ばっかりだったけど……今度こそ!」
トモキが地面にビーコンを突き立て、スイッチを押す。
ゴォォォン……!
耳をつんざくような音と共に、空間が一瞬だけ歪んだ。
「やった! 成功した!」
「転送座標、記憶の鉱石の保管庫へリンク成功。コア、保護エリアへ送ります!」
ピシッ!
コアが光の粒子となって消えると同時に、マトメたちが追いついた。
た。
「……消えた……? なにしやがった、このガキども!」
「コアはもうここにはないよ」
シオンは一歩も引かずに言い放つ。
「私たち、星を守るために動いてるの。あんたたちと違ってね!」
「チッ……だったらもう用はねぇ!」
マトメが腰のホルスターから銃を抜き、シオンに向かって引き金を引いた。
――バンッ! バンバンッ!!
空気が裂けるような音が響く。
「シオン様ッ!!」
「いやだああああああ!!!」
トモキとカロンが叫ぶ。
だが――銃弾は、シオンの体に届くことはなかった。
シュワァァァァ……
シュワァァァ……
空間が波打ち、青い光の膜がシオンの周囲に広がった。水のような、だが強固なバリアがすべての弾丸を包み込み、消し去る。
「な……なに……!?」
マトメが目を見開く。
シオンの髪が風に揺れ、瞳に海の色が宿る。
シオンの周囲に、水が、波が、まるで意思を持つように集まり始めていた。
「この感じ……星が、私を……」
シオンの瞳が淡く光る。彼女の身体を水のヴェールが包み、風と潮の音が森の中に鳴り響く。
「星が、怒ってるんだよ。あなたたちの勝手な行動に……!」
ドオォォンッ!!
シオンが手を掲げると、空から海のような波が渦巻き、マトメに向かって叩きつけられた。
「ぐあっ……が、はっ……!」
激しい潮流に巻き込まれ、マトメの身体は木々を弾き飛ばされるように吹っ飛び、そのまま気を失った。
「す、すげぇ……! 今の、シオンの力……!?」
「まるで星が……シオン様を守っているかのようデス……」
カロンとトモキが、ただ呆然と見つめる中――
上空から、小型の輸送艇が降下してくる音が聞こえた。
「――こちら惑星パトロール。エリア制圧完了、犯行グループを確保します」
制服を着た複数のパトロール隊員が降り立ち、マトメたちヘリオス団員を拘束していく。
「間に合ってよかった。通報、感謝する」
冷静な声の隊員がそう言うと、シオンたちは肩の力を抜いて座り込んだ。
「終わった……?」
「いや、始まったばかりデス。コアを狙う動きは、まだ終わっていません……」
そう呟くカロンの目は、遠くを見据えていた――。
いかがでしたか? 今回はマトメとの対決、そしてシオンが初めて“星詠み”としての力を星とともに発揮する場面を描きました。星の意思がシオンを守り、シオンが星を守る。この関係性が少しずつ強くなっていきます。
次回、第10話では、パトロール隊の先に待つ新たな展開が始まります!
読んでくださって、ありがとうございました!