エレキ ep5-進化する守護者(カロン)――王都牢獄、崩壊戦!-
牢獄でついに再会した、父・マサキ。
だがそれは、ネブラの罠だった――。
無数の兵に包囲され、逃げ道を失った仲間たち。
追い詰められた絶体絶命の中、ついに目覚める――
かつて「守る」ことを誓った、あの機械の魂が。
想いは、鋼を越えて進化する。
守護者覚醒の刻、来たる!
「さようなら、星詠みの仲間たち。」
そう言い残して、ネブラは国王兵を牢獄へとなだれ込ませ、自らは闇へと姿を消した。
無数の兵に囲まれ、地下の牢獄は混沌に包まれる。
「くっ……二手に分かれるしかない!」
咄嗟に判断したユーリが叫んだ。
「シオン、こっちだ!カロン!トモキたちを!」
「任せてくださいデス!」
シオンが身構える。
「シオンはここで待っててね。」
ユーリがシオンの肩を抑えて優しく微笑む。
ユーリは唇を引き結び、剣を抜いた。
──その剣は、漆黒に染まり、刃のような風をまとっている。
「通してくれるかしら、雑魚共」
瞬間、ユーリの身体が閃光のように走った。
「ぐああっ!?」
兵士の一人が斬られたことにすら気づけず、吹き飛ぶ。
黒い剣が空気を裂き、次々に兵の装甲を貫いていく。
「は、速い……!?」
「なんなんだあの女は……!」
恐怖にひるむ兵士たち。その隙に、ユーリの動きはさらに加速する。
一撃、また一撃。的確に、急所だけを狙って斬り抜ける。
まさに、戦場に舞い降りた黒き死神――
「ふぅ……こんなもんかしら」
全ての兵が倒れたのを確認すると、ユーリは剣を収めた。
「さて……トモキたちを助けに行こうか。」
「す…すごっ!」シオンは驚きで目をパチパチする。
軽く肩を回しながら、ユーリとシオンは通路を駆けていく。
◇ ◇ ◇
一方――
マサキ、トモキ、そしてカロンは、迫り来る兵たちの包囲に追い詰められていた。
「くそっ……俺一人で捕まれば……!」
「いやだよパパ! 置いていかないで!」
「逃げろって言ってんだろ! お前は……まだまだ生きなきゃいけないガキなんだよッ!」
その時、兵士たちが銃を構える。
「マサキ博士、貴様をここで処刑する。撃て!」
銃口がマサキへと向けられた。
「パパは……殺させない!!」
トモキが身を挺して前へ出る。
「バカ! トモキ、どけッ!!」
引き金が引かれ――
だがその瞬間、銃弾が弾かれる音が響いた。
カロンが身を投げ出し、間一髪でトモキを守ったのだ。
「カロン……!」
マサキの瞳に、カロンのボディが傷ついていく様が映る。
「……ッ、損傷率……67%……まだ……問題、ナイ……」
カロンは、なおも次の兵を弾き飛ばし、殴り、蹴り、そして立ちふさがる。
その動きは、もはやロボットの限界を越えていた。
「……守る……守らなければ……」
内部の駆動系が火花を散らし、片腕がうまく動かない。
それでも、なおもカロンは動く。
「……トモキ様を……マサキ様を……」
機械の体が限界を迎えていく中、トモキがまた狙われる。
その瞬間――
走馬灯のように、記憶がよみがえる。
──雨の日。野良犬に囲まれて、怯えていた幼いトモキ。
──そんなトモキを、守ったのは自分だった。
──震える手を伸ばし、「カロン、ありがとう……」と微笑んだ、あの日。
──命に、価値をくれたのは、あの小さな少年だった。
(……私は……あの日……誓った……)
(この命にかえても、トモキ様を……守ると!)
「守るッッ!!」
その叫びが、空間を揺らす。
光が、カロンのボディを包み込む。
ブゥン、と低い音を立て、構造が変わり始める。
丸みを帯びていた体が、鋭く、シャープに。
黒く、細く、研ぎ澄まされたシルエット。
赤いラインが全身を走り、目は液晶ではなく、感情を宿した人間のような瞳に。
右腕は変形し、ブレードが形成されていた。
「え……だ、誰……?」
トモキが呆然とつぶやく。
「トモキ様……マサキ様。ご無事で、なによりデス」
その声に、トモキの顔がぱっと明るくなる。
「カロン……! 本当に、カロンなんだね!」
マサキは、ただただ唖然としながら、ぽつりとつぶやいた。
「こいつぁ……進化しやがった……。守りたいって気持ちが、機械のボディを変えた……すげぇな……」
闘志を宿した守護者――カロン。
その瞳はまっすぐに、次なる敵を見据えていた。
――戦いは、ここからだ。
今回は、ユーリの圧倒的な戦闘力と、カロンの進化という、まさに”逆転”の瞬間を描きました。
カロンが“守る”という強い想いで進化する場面は、この物語でも特に大切なシーンの一つです。
彼はもうただのロボットではありません。想いを宿し、自らの意志で進化した存在――
次回、覚醒したカロンと共に、脱出のための反撃が始まります。
彼らはまだ、運命の序章にすぎない。




