ステラ・マリス ep3-星の声と、機械の心-
不時着した宇宙船、泣き虫な少年、そして黒いロボットとの出会い。
冒険の歯車が動き出したシオンの前に、「星の声」が静かに囁きはじめる。
そのロボットは、まるで騎士のようにシオンの前に立った。
「……排除完了。脅威度・低。対象、保護対象と認識」
「な、なにそれ! いまの、私を守ってくれたの……?」
ロボットは応えなかった。ただ、赤い光の瞳を揺らしながら、ゆっくりと振り返った。
「トモキ様、バイタル安定。移動は可能デス」
「う、うん……ありがとう、カロン」
ツンツン頭の男の子――トモキが立ち上がる。その足はふらつきながらも、彼は勇気を振り絞って、シオンに向き合った。
「ご、ごめんね……えっと、きみ、だれ?」
「私はシオン。ここの住人! そっちは、宇宙人でいいの?」
「う、うちゅ……ちがうよぉ! ぼくは、惑星調査隊のトモキ……。でも、パパとはぐれちゃって……」
目を潤ませながらも、懸命に状況を説明しようとするトモキ。その傍らに立つロボット――カロンは、警戒心を緩めない。
「本機はカロン。トモキ様の護衛機デス。任務内容は機密事項。立ち入りは推奨されません」
「なにそれ、かたっ! 別に怪しい者じゃないってば!」
「安全が確認されるまで、発言は制限させていただきマス」
「カッチカチだなーこのロボ……カロン?」
言いながらも、シオンは少しだけ笑った。
――その瞬間だった。
風が吹いた。
草原の向こう、森の奥。空の色が深く変わっていく。
シオンはふと、夜空を見上げる。
星が、震えている。
(……また聞こえる。星が、ざわめいてる)
視界が一瞬、きらめくように変わる。目の前の空が、星空のように開かれていく。
そして――彼女の目の前に、ひとりの女性が現れた。
透き通るような髪と瞳、星の光をまとうような美しさ。
その姿は、惑星ステラ・マリスの“化身”だった。
「ようこそ、星詠みの少女。いま、あなたに語るべき時が来たわ」
まばたきもできないまま、シオンはその存在を見つめた。
それが、すべての始まりだった。
ついに始まった“星詠み”の覚醒。
ステラ・マリスの声が、シオンの中に新しい世界を開いていく。
次回――
『第4話:星の秘密と少女の運命』
静かに、でも確かに。彼女の運命が動き出す。
どうか、次も見届けてください。