エレキ ep0-届かぬ声、揺れる信頼-
「……ぅ、うーん……。おかしい、ノイズが多すぎるよぉ……」
トモキが船の片隅に座り込み、自作の通信機を分解しては組み直していた。見慣れた工具ポーチを膝に広げ、何度目かの調整。
「父さんのコードID……間違いなく反応してるんだ。でも、音がブツブツ途切れて……」
小さなスピーカーから、ノイズ混じりの声が微かに漏れた。
──トモキ……このままじゃ……王が……データを……気をつけ……ろ……
「……父さん……?」
その瞬間、通信はぷつりと切れた。トモキの手が止まり、工具がカランと落ちた。
「なんで……どうして……!」
*
「パトロール中継所、接近。認証コード、照合完了デス」
船の操縦を担当していたカロンが、冷静に告げた。船は、銀色に光る中継所へ静かに接近していく。
「ここなら何かわかるかもね」
シオンが真剣な眼差しで前を見据える。
*
中継所のホログラム映像室。そこには、信じられない情報が映し出されていた。
【惑星エレキ・開発庁主任技術官 マサキを国家反逆罪により逮捕。現在、王国サンボルト内にて拘束中】
「な……なんで……」
トモキの声が震えた。
「これは……どう考えても、おかしい」
ユーリが低く呟いた。
「マサキさんが、国家反逆……? あり得ない」
シオンも続く。
「データの改ざん痕跡アリ。映像信号にも不自然な圧縮が確認できマス」
カロンが解析結果を叩き出す。
「つまり、罠だってことか」
シオンが拳を握った。
*
「パパは……パパは……!」
トモキが震える手でノートを抱きしめた。そこにはマサキと一緒に描いた回路図。子どもの筆跡と父の手書きの設計が重なっている。
「悪いことなんて……するわけない! そんなの……そんなの……!」
「大丈夫」
シオンがそっと手を伸ばす。
「信じよう。そして、確かめに行こう。……一緒にね」
*
船が再び宇宙に飛び立つ。
進路、惑星エレキ。
暗雲立ち込める都市、封鎖された研究棟、王の思惑、そしてマサキの行方――。
謎に満ちた星に向けて、シオンたちの新たな旅が始まる。
ミラージュ編を経て、シオンたちの絆はさらに深まりました。
しかし、そんな中で届いたのは、トモキにとって耐え難い現実。
次なる舞台【エレキ】では、トモキの故郷である科学と電気の星を巡る物語が始まります。
父・マサキの逮捕、その裏に蠢く陰謀、そしてロボット・カロンの過去にも再び光が当たる――
果たして、真実の先にあるものとは?
新章、開幕です。




