ミラージュ ep7-真に向き合う者-
幻視の星ミラージュでの試練が、いよいよ核心に迫る第7話。
今回の主役はシオン。
彼女が向き合うのは――星そのものの“心”。
ミラージュの真実とは? そして星詠みとしての覚悟とは――。
ぜひ最後までご覧ください。
「……ここは?」
シオンが立つのは、鏡のように澄んだ水の上だった。どこまでも静かで、空も星も映し出す湖面。その向こうから、誰かの声がする。
『ようこそ。星詠みの少女』
低く、優しげな、でもどこか影を帯びた声。シオンは目を細め、問いかける。
「……あなたが、ミラージュ?」
『ああ。僕がこの星――ミラージュ。ようこそ。シオン』
微笑むその声には、どこか子どもが駄々をこねるような甘えが混じっていた。
『僕は、辛いことも悲しいことも、誰にも味わってほしくなかった。ただ、それだけなんだよ。だからここにいるみんなを、安心させてあげたかったんだ』
「……だから幻を見せてたんだね」
『わかるかい?』
「わかるよ。でも、私たちは――逃げてばかりじゃいられないんだ」
シオンの声が強くなる。
「悔しいことも、悲しいことも、目を背けたいって思う。だけど、それを知らなきゃ、同じ過ちを繰り返しちゃう。私は……私たちは、繰り返さない。だから、逃げない!」
沈黙が訪れる。やがて、ミラージュの声が小さく呟いた。
『……君とは、分かり合えそうにないな』
――バシャッ。
鏡の湖面が割れ、そこから現れる“影のシオン”。
ノヴァの崩壊、倒れたマサキ、マクの死。繰り返される記憶。痛み、涙、後悔――。
シオンは思い出し涙を流す。
それでも、シオンは前を見た。
「悲しいよ。止めたかったよ。だけど……全部、私の大切な記憶なの。星詠みとして、もう誰も泣かせたくない。だから、私は――あきらめない!」
シオンの目が強く輝く。
ミラージュは低い声で続ける。
『……なら、見せてあげるよ。星詠みの“現実”を』
滅びていく星々の映像。悲鳴、消失、崩壊。助けられなかった星の記憶がシオンに襲いかかる。
『これが君の道の果てだ。どうして、ここにいようとしないんだ? 安心して、苦しまずに済むよ?その方がいいでしょ?』
「……いいわけないでしょ」
ピキッ。
「そんなの、いいわけない。星が……泣いてたじゃない。苦しんでたじゃない……! それを見て、私が逃げられるわけない!」
ミラージュにヒビが入る。
「お前一人に何ができるっていうんだ!」
ミラージュは大きく叫ぶ。
「私にできなくても……私たちになら、できる!」
カロンがいて、ユーリがいて、トモキがいる。仲間たちの顔が脳裏をよぎるたびに、鏡がビキビキとひび割れていく。
「私たちには、できる!!」
――砕けた鏡の中から、もう一度ミラージュが現れる。今度は穏やかな笑顔を浮かべていた。
『……本物なんだね、君たちは。久しぶりに“本物”に出会えた気がするよ』
ミラージュの手が宙を撫でると、ユーリ、トモキ、カロン――仲間たちの姿が現れる。
「みんな……!」
『君の仲間たちも、それぞれの試練を乗り越えたよ』
「ふふっ、当たり前じゃんっ。だって、私の仲間たちだから!」
『……僕も、逃げるのをやめようかな。ありがとう、シオン』
「ううん、こちらこそ。ありがとう、ミラージュ」
“強さ”とは、傷を隠すことではない。
“優しさ”とは、全てを受け入れて向き合うこと。
光が差し、星の世界が開けていく。
シオンは鏡の池に立っていた。名前を呼ぶ声が響く。
「シオンっ!」
「シオンさんっ!」
「シオン、大丈夫デスか?」
「……みんな!」
駆け寄ってくる仲間たち。手を取り合い、抱きしめあう。
絆と友情――それは、どんな幻よりも真実で、温かかった。
少女の旅は、再び未来へ向かって走り出す。
幻視の星ミラージュ、ついに完結です!
今回はシオンの内面、そして星そのものと向き合う静かで熱い物語でした。
“優しさ”とは、逃げることではなく、すべてを受け止めて前に進む力。
ミラージュとの対話を通して、シオンは一人の星詠みとして、そして仲間と共に進む旅人として、また一歩成長しました。
しかし――
平穏な時間も束の間。
次に彼らの元に届いたのは、信じがたい知らせ。
「トモキの父、マサキがエレキ星で逮捕された」
何が起きたのか? エレキ星に何が……?
動揺するトモキ、焦るカロン、そして決意するシオン。
彼らの次なる舞台は、科学と電気の星【エレキ】!
迫る陰謀、家族の絆、そしてカロンの過去――
激動のエレキ編、間もなく開幕です!!




