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星詠みのシオン  作者: ray a life
幻視の星ミラージュ
25/36

ミラージュ Ep.6-もう仮面はいらない-

――この星は、幻を見せる。

それは自分自身が隠してきた「痛み」であり、「罪」であり、そして「願い」でもある。


今回の主人公はユーリ。

仮面の奥に隠された、彼女の記憶と想いが、静かに、しかし確かに揺れ動きます。


彼女が守れなかったもの――

そして、これから「守ろう」とするものへ。


それでは本編、どうぞ。


「……出てこい」


静かに剣を構えながら、ユーリは己の影に呼びかけた。

霧のような闇の中に、ひとつの姿が浮かび上がる。鋭い眼光。真紅の装束。

それは彼女の記憶に深く刻まれた人物――レクサス・リ・ユニオン。


「レク隊長……」


呟くと同時に、かつての記憶がフラッシュバックのように押し寄せた。

若かりし頃のユーリ。まだ未熟な剣士だったあの頃。任務の最中、包囲され、動けなくなる彼女。

そんな彼女を救ったのは、剣一本で現れた、あの人だった。


「無茶をするな、ユーリ!」

「……レク、助かった」


ふたりで背中を預けて戦い、敵を蹴散らす。そんな光景の後――。


突然、レクが振り返り、ユーリに剣を向ける。


「レク!? なぜ――」


ユーリの剣が咄嗟に動く。

そして――気がつけば、レクの胸に剣が突き刺さっていた。


「……守れなかった。私は――」


鏡のような空間に立つ現在のユーリが、苦い顔で呟く。

その瞳に、あの日の血の赤が映る。


「……あの時の私は、弱かった。だから、守れなかった」


鏡にヒビが入る。パキン、パキンと音を立てて。


ユーリは静かに仮面を外した。

鋭く、まっすぐな視線。冷えた剣のような美しさを持つ、素顔のユーリがそこにいる。


「だけど今の私は、もう迷わない」


剣を構える。


「今度こそ……守る!」


その言葉とともに、鏡が粉々に砕けた。

幻の世界が消えていく。立ち込めていた霧が晴れ、空が見える。


「……シオンを探さなくちゃな」


目を細めて歩き出したユーリの前に、声が響いた。


「ユーリさん!」


駆け寄ってくるトモキとカロン。

二人とも、少しだけ照れくさそうに頭を下げる。


「さっきは……ごめんなさい、デス」

「ボクも……ひどいこと言っちゃってごめんなさい」


ユーリは、ふっと微笑んだ。


「なんのことかな?……忘れてしまったよ」


目を丸くする二人に、背を向けて手を振る。


「さあ、行こう。シオンが待ってる」


風が吹き抜ける。

かつて心を覆っていた仮面は、もう彼女の顔にはなかった。


ミラージュの試練、最後の一人は「ユーリ」でした。

戦士であり、監視者であり、そして仲間である彼女の胸の奥にあったのは、「過去に守れなかった痛み」。


しかし、痛みを知っているからこそ、彼女は人を守ろうとする。

それは、どこかでシオンにも、そしてカロンやトモキにも通じる感情です。


次回はいよいよシオンが登場。シオンが向き合う影とは、彼女の持つ悲しみの一面に触れる話をお楽しみに

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