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星詠みのシオン  作者: ray a life
幻視の星ミラージュ
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ミラージュ ep1-幻視の星《ミラージュ》-

「ミラージュ」──それは“心を映す星”と呼ばれる、謎に満ちた惑星だった。


その星の大気は、光を歪ませ、空間をたわめる。

谷は空へと反転し、川は空に流れ、空は底のない鏡のように光を返す。

全てが“幻”に包まれたその星では、心に抱えたものが形を成し、見る者に“本当の自分”を突きつけるという。

生きて帰った者はほとんどおらず、調査隊の間でも「封じられた星」として扱われていた。



「やばいよぉ!コントロール不能だってばああっ!」


トモキの叫びが、宇宙船の操縦席に響く。

制御パネルは点滅を繰り返し、警報音が鳴り止まない。


「外殻フレームに異常ナノ粒子が付着デス……!推進装置、応答なしデス!」


カロンの声もいつになく焦っていた。


「落ち着いて。高度計、いま何メートル?」

シオンが船体を必死に支えながら言うが、計器はもう意味を成していない。


「わかんない!……けど、地面が、近いぃぃぃっ!!」


その瞬間、視界が白く弾けた。

次の瞬間、全てが無音になった。



──薄い霧が漂っている。

宙に浮かぶ島々。反射する空。地と空が区別できないほど、全てが**“鏡”のように光を返している**。


ゆっくりと目を開けたシオンは、宇宙船の側に投げ出された自分の姿に気づいた。


「……生きてる?」


小さくつぶやいて立ち上がる。視界の向こう、宙に浮かぶような岩の上で、カロンがうずくまっていた。トモキの姿もある。ユーリも倒れているが、意識はあるようだった。


「……ここが、ミラージュ……?」


目の前に広がる世界は、まるで現実味がなかった。

すべてが反射し、すべてがゆがんでいた。


空を見上げれば、そこには「自分自身」が立っていた。

鏡のように、シオンと同じ顔、同じ服。けれど、その瞳には冷たい静けさがあった。


「ようこそ、シオン。ここはあなたの心。」


鏡の中の“もう一人のシオン”が、静かに微笑んだ。


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