表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星詠みのシオン  作者: ray a life
始まりの星 ノヴァ
19/35

ノヴァ-特別補完エピソード- 「マクという男」ノヴァと、過去と、娘と

一】大学時代:ライバルの名はマサキ


若きマクは、惑星科学研究大学にて“ノヴァ理論”に取り組む天才肌の研究者だった。

そして、彼と常に首位を争っていたのが、発明家志望のマサキ。


マサキ「興味ねぇよ。あんな研究オタクと競ってる暇はねぇっての」

マク「お前こそ、発明家ごっこしてる暇があるなら論文の一本でも書けよな」


口を開けばケンカばかりだったが、周囲は知っていた。

このふたり――誰よりも互いを認めていることを。


卒業式の日、ついに意地を捨てる二人。


マク「お前の論文、意外と…面白かったよ。まぁ、完璧ではなかったが」

マサキ「へぇ?そっちはどうだよ。わりと…読んじまった。ま、難しすぎて途中で寝そうになったけどな」

(ふっと笑い合う)


そして互いの卒論の象徴品を交換する。

•マクがマサキに渡したのは、自作の携帯型バッテリー付き工具箱。

•「どこでも発明ができるように」と、発明家をライバルながら支える気持ちを込めて。

•後にそれは、トモキの手に渡る。



【二】娘・イリアの記憶


マクには、大切な存在がいた。

娘のイリア。

ノヴァの研究施設の裏手で、芝生を走り回っていた元気な女の子だった。


マク「こら、また計測装置をいじったな!? イリアァーッ!」

イリア「だって、赤いボタンが押してって言ってたんだもん!」


機械を壊して叱られるのに、研究者たちにはなぜか好かれていた。

笑顔が、風みたいに自由だったから。


7歳の誕生日を前に、突如、イリアは重い病で動かなくなってしまった。

マクの心にはぽっかりと穴が開いた。


マク「……イリアに、ノヴァの話をするのが好きだったんだ。優しくて、深くて、時々、泣いてるみたいな星でな……」


彼はそれから、誰とも深く関わらず、ただノヴァに残った。

あの星に、イリアの残り香がある気がしたから。


そして――

ノヴァの最期の時。

崩壊しかけた空間の中で、シオンの力によって擬人化されたノヴァは、少女の姿でマクに語りかけた。


その微笑みは――


「まるで…イリアに似ていたな……」


マクは、笑って逝った。



【三】託された想い


彼が最期に起動した同室物質交換装置は、大学時代にマサキと共に作った卒業研究の産物だった。


狂ったように取り憑かれていた研究と、友との日々と、そして娘の面影。


それら全てが、あの瞬間、ひとつの点に結ばれた。


彼の死は、無駄ではなかった。


そして今、マクの工具箱を握る少年がいる。

少年の名はトモキ。

発明家のタマゴ。――そして、希望。



・作者メモ:この話を書いた理由


「マク」という男は、“悪役”にも、“完全な善人”にもできなかった。

彼は、過去に傷を持ち、償いきれない罪を抱えたまま、それでも「誰かの役に立ちたかった」人物です。


彼がシオンたちに残したものは、技術でも、作戦でもなく、

命を削ってでも“託す”という想いの尊さだったのかもしれません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ