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星詠みのシオン  作者: ray a life
始まりの星 ノヴァ
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ノヴァ ep7-星の最後はかくも虚しく-

星を守るための作戦。

それは、あまりにも子どもじみたものだったかもしれない。

でも、その小さな希望が、誰かの命を動かし、そして未来を変えようとする。

“びっくりさせちゃおう大作戦”――その結末を、どうか見届けてください。



トモキとカロンが改良を重ね、ついに完成した「偽・ノヴァクリスタル」。


それは見た目も波動も、本物に限りなく近い出来映えだった。


「これ……本当に、完成したのか……?」


マクが信じられない顔でそれを見つめる。


「うん、やってやったぞ! “マルチスペクトル式擬似核反応型クリスタル状信号発信機(仮)”完成!」


「……名前が長すぎデス……」


そして、舞台は整った。


星の中心部に、偽クリスタルを設置。

その瞬間、周囲の空気が変わる。まるで、星そのものが呼吸を止めたかのように。


「……これで、連絡を入れれば来るわよ。ネブラも、きっと」



「マクから入電です。ノヴァクリスタルが再生成されたと。どうされますか?」

ネブラが不敵に笑う。

「回収しろ。」


数時間後――


空間がねじれ、裂け目の中から漆黒のローブをまとう者たちが現れる。


ヘリオス団、到着。


「クリスタル、確かに確認。回収する」


彼らが手を伸ばした瞬間――


「今だ!」


カロンが飛び出す。瞬間変形、片腕を鋭利なブレードに変え、敵一体を瞬時に撃破。


「カロン、右サイドをお願い!」


「了解デス、ユーリサン!」


ユーリも漆黒のコートを翻し、疾風のごとく動く。敵の懐へと踏み込み、剣を抜く。


“戦闘が苦手な三人”に代わり、彼女たちは冷静に敵を制圧していく。


「やった……成功した! 本当に、びっくりしてた!」


シオンは喜びをあらわにした。だが――


「……あれ?」


その場に、ネブラの姿はなかった。



少し離れた空間の中、ネブラが立っていた。


そして、目の前でマクが通信装置を切る。


「……気づいてたよ、お前が裏切ることくらい」


ネブラの声は、あくまで冷たく、静かだった。


「ネブラ……聞いてくれ。俺は、ただ……!」


ネブラは言葉を遮るように、手にした黒い刃をマクの腹に突き立てる。


「弱い奴はすぐに流される。家族の死も、希望も、全部幻想だ。……ま、クリスタルも手に入ったし、今日は“良し”とするか。さらばだ、マク。そうだ、娘のことは残念だったよ。治療は間に合わなかったようだ。」


刃を抜き、背を向けて次元の裂け目へと消えるネブラ。


マクは地面に倒れる、涙で溢れる目を擦り精一杯の力でで装置を起動する。


「……マサキ……今こそ、お前の……卒論を信じるぞ……」


“同室物質交換装置”――発動。

光が走る。

ネブラの持っていた本物と、偽物がすり替わる。



白衣に血を滲ませながら戻ってきたマクは、トモキの前で膝をつく。


「……これで、借りを返せたかな。バカなことをした、本当に……」


手渡された本物のノヴァクリスタル。

トモキは涙を堪えながらそれを受け取り、所定の位置に戻す。


しかし――


「……なんで……!? 崩壊が止まらない!」


シオンが叫んだそのとき、空が割れた。


再び現れた“星の空間”。


そこには、ノヴァ――滅びゆく星の意識が、少女の姿で佇んでいた。


『ありがとう、シオン。でも……もう、私は持たないの。』


「そんな……せっかくクリスタルを戻したのに……!」


『それでも……間に合わなかったの。けれど……あなたに会えて良かった。ありがとう、シオン。マクも喜んでいるわ』


ノヴァは微笑み、シオンを抱きしめる。


『……時間がないの。少し、力を借りるね』


次の瞬間、トモキ、カロン、ユーリ、そしてマクが空間に呼び寄せられる。


『シオンを、連れて行ってあげて』


無言でうなずく仲間たち。


だが、マクだけは首を横に振る。


「俺は……最後まで一緒にいるよ。おれの犯した罪を、ここで終わらせたいんだ」


現実に戻ると、崩壊が加速していた。

ユーリが叫ぶ。


「行くわよ、シオン! 今すぐ!」


「……いやだ! ノヴァが……!」

シオンはクリスタルを見つめながら動けないでいる。


「バカ! ノヴァが頑張ってくれてるから、今逃げられるんだろ! お前が行かなきゃ、意味ないだろ!」


怒鳴るトモキ。

ショックで動けないシオンを、カロンが優しく担ぎ上げる。


「レディ。強引なのは好きではありませんが……今は、そうも言ってられないデス」


マクがポッドの場所を示す。


「上だ。行け……船はすぐ近くにある……!」


マクの体には爆弾が装着されていた。


「これで、少しは時間を稼げる。罪滅ぼしできるかな? ……いや、足りねぇか」


トモキを見て、にやりと笑う。


「情けねぇとこ、見せちまったな……でもな、お前は最高に“発明家”に向いてるよ。会えて……よかったよ」


ポッドが上昇していく中、マクは最後に呟いた。


「ノヴァ……ありがとうな」


星が震える。

巨大な爆発音が響く。

マクの命と引き換えに、星の崩壊がほんの少しだけ止まった。


4人は――失ったものと、手にした未来を胸に、宇宙船へと辿り着いた。

子供じみた作戦だったかもしれない。

でも、それがきっかけで、人が動いた。未来が動いた。

そしてひとつの星と、男の命が、その“希望”に応えた。


ありがとう、マク。ありがとう、ノヴァ。


――物語は次の星へ。

それぞれの「幻」が心を試す星、ミラージュへ――。


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