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星詠みのシオン  作者: ray a life
始まりの星 ノヴァ
15/35

ノヴァ ep5-マクとネブラ-

ようこそ、第15話へ。


これまでの旅路で出会ったさまざまな星と人たち。

その中で、今回の主役となるのは、過ちを抱えたひとりの学者――マク。


彼がなぜノヴァクリスタルを手渡してしまったのか?

その裏には、父としての想いと、信念との板挟みで揺れた日々がありました。


そして、今作から物語は、善悪や正義だけでは語れない領域に踏み込みます。

「誰かを守る」ということは、誰かを犠牲にすることなのか?

その問いに、登場人物それぞれが自分の答えを出そうとします。


重い回ではありますが、シオンのまっすぐな想いが、きっと心に灯をともしてくれるはずです。


「あの日はちょうど、娘の誕生日だったんだ……」


マクはぽつりと呟いた。

仄暗いラボの片隅、まるで自分を裁くように、星の光の届かぬ場所で。


「7歳になったばかりでね。星の結晶が好きでさ、誕生日には自作の小さなクリスタルをプレゼントしたんだ。……でも、その頃から、娘の身体に異変が出始めてね」


トモキ、カロン、ユーリ、そしてシオンは、静かに彼の話を聞いていた。


「医者を回っても、どこも匙を投げた。そんな時だった。初めて“彼”と接触したのは」


――ヘリオス団・幹部 ネブラ。

冷たい笑みを浮かべた、銀髪の青年。

流星のような光を纏い、現れては消える、得体の知れない存在。


「最初は軽い情報提供だった。“あなたの研究は素晴らしい”ってね。

 2度目は、より踏み込んできた。“もし、ノヴァクリスタルの座標と研究データを渡してくれるなら、我々が娘を治してあげましょう”と……」


「それでも、最初は断った。信じられるわけがないと思ってた。だが……3度目の接触で、娘を“すでに預かった”と告げられたんだ」


息をのむシオンたち。

マクの目は血走り、言葉は絞り出されるようだった。


「写真が送られてきた。見知らぬ施設で眠る娘の姿が……。治療が始まってる証だと、ネブラは言った。

 私は……私は……クリスタルの座標を教えてしまった……!」


──ノヴァクリスタルの強奪は、計画され、実行された。

マクはあえて警報システムを止め、研究員を遠ざけた。

ネブラは一切手を汚すことなく、星の命を奪っていったのだ。


「君は……随分、自分勝手なのだな」


ぽつりと、ユーリが言った。

声は低く、冷たい。だが感情を含んでいる。


「たとえ娘を守りたかったとしても、それで星を殺したなら……その罪は、消えませんよ」


「そんな……マクさん……ひどいよ……」


トモキの声は震えていた。

その言葉が、小さな決壊を生んだ。


「人間一人と、星全体の命を比べたら……答えは明白デス」

カロンの目は、わずかに輝いていた。だがそれはロボットの処理光ではなかった。


「でも!」


声が走った。


「でも、私は、まだ諦めてないよ!」


シオンは立ち上がる。その目に宿るのは、まっすぐな炎。


「ノヴァの声、ちゃんと聞いた。マクさんの想い、伝わってたんだよ! だったら、ノヴァだって……まだ、望んでるはずだよ!」


「まだ間に合う。ノヴァも、マクさんの娘さんも、助ける!

 私は、“星詠み”の子だから。

 星の声に、ちゃんと応えるって、決めたんだ!」


静まり返った空気に、確かに灯る意志の火。


マクは、目を伏せたまま、震える手で目元を拭った。

泣いていた。


そして、言葉にならない声で、ただ一言だけ──


「ありがとう……」


シオンの決意が、また一歩、誰かを救っていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


マクという人物の過去、ネブラとの接触、そしてノヴァの悲劇。

星を救いたいという純粋な想いが、結果として多くの命を危険に晒してしまったその現実は、決して他人事ではありません。


でも、そんな時でも、誰かが「まだ間に合う」と信じてくれるなら――

希望は失われないのだと思います。


シオンの「私は星詠みの子だから」という言葉は、彼女自身の決意であり、物語全体を貫く光です。


次回はついに、作戦開始!

シオンたちが考える、びっくりさせちゃおう大作戦とは……?

どうぞお楽しみに!


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