ノヴァ ep1-ノヴァに降り立つ-
星の声が、聞こえない──
それは「星詠み」シオンにとって、何よりの異変の証だった。
新たな舞台は、始まりの星。
美しき星を蝕む陰謀の影が、シオンたちに忍び寄る。
「……ここが、ノヴァ……?」
宇宙船の窓から見下ろす星は、以前マサキの写真で見たものと違っていた。
本来なら虹色の輝きを放つエネルギーの粒子が、星全体に降り注いでいるはずだった。
だが今、ノヴァは灰色がかった大気に覆われ、どこか沈んで見える。
「星の声が……すごく小さい」
シオンは胸に手を当て、目を伏せた。
かつては賑やかに語りかけてきた星のささやきが、今は遠く、微かにしか届かない。
「エネルギー値も急激に下がってるデス」
カロンがセンサーを確認しながら報告する。
「このままでは、星が“沈む”可能性もあるデス」
「……そんな……!」
不安に揺れるシオンの横で、トモキがぽつりと呟く。
「パパが言ってたよ。ノヴァには、マクさんっていうすごい研究者が住んでるって」
「ああ、マサキさんが話してたね」
シオンは頷いた。
『あいつはな、俺と肩を並べる天才だ。ちょっと変人だけど、ノヴァの自然と研究を愛しすぎて、ついに星に住んじゃったようなやつだよ。お前らに会わせたら、きっと面白い経験になるぞ!』
マサキのその言葉を思い出す。
「よし、まずはマクさんを訪ねよう! きっと何か知ってるはずだよ!」
トモキが張り切って言う。
こうして、二人と一体──シオン、トモキ、カロンは、
始まりの星ノヴァの異変の原因を探るべく、調査の旅に出発した。
……が、その道中。
「……カロン、なんかいる気がする……」
「その通りデス。前方の地熱地帯に、複数の生体反応アリ」
「え!? うそっ!? ど、どうしよっ……ぎゃあああああああああああ!!」
悲鳴を上げたのは、もちろんトモキだった。
砂煙の向こうから姿を現したのは──異形に変異した生物たち。
「なにこれ!? 星の動物って、もっと可愛かったはずじゃ……!」
「エネルギーの崩壊で、バランスが崩れたのデス。狂暴化している!」
「……来るよ!!」
シオンが構えるが、敵は多く、そして素早い。
地を這う者、空から襲いかかる者──三人では手に負えない数だった。
その時。
「……お前たち、下がっていろ」
低く響く声が、風を切って届いた。
次の瞬間、漆黒の鎧を纏った戦士が宙から舞い降りる。
両手に携えるは、刃の光。
漆黒の刃が交差するたび、敵がひとつ、またひとつと斬り伏せられていく。
「な、なにあれ……めっちゃ……強い……!!」
トモキの顔が蒼白になる。
カロンが静かに口を開く。
「惑星パトロール第五部隊隊長──コードネーム、《黒騎士ユーリ》。惑星パトロール最強の戦士デス」
「……最、最強……!?」
鎧の隙間から覗くのは、冷たい視線と、鋭利な殺気。
──一瞬で生物たちを制圧した黒騎士は、無言で振り返る。
「この星の異常を感じて、調査に来た。……お前たちは?」
「わたしたちは、マクさんって人に会いに来たの」
シオンが答える。
「……ならば、私も同行する。星の異変と彼の研究が無関係とは思えん」
そう言って、騎士──ユーリは、すっと三人の前を歩き出す。
「やったー!! 超強い味方きたあああ!」
トモキが歓喜の声を上げるが、震えているのは隠しきれていない。
こうしてシオンたちは、思いがけない仲間を得て、
マクの元へ向けて歩を進める。
だがその頃──
遥か地中、星の中心にある研究施設では、
《ノヴァクリスタル》が、すでにその輝きを失いかけていた──
始まりの星、ノヴァ編が始まりました!
エネルギーを失いかける星、動き出す陰謀、そして登場する新たな仲間《黒騎士ユーリ》──
次回、シオンたちは星の真実に少しずつ近づいていきます。お楽しみに!