9.呪いを受けた少女②
クロンスさんの呪いについて聞いたが、俺は依然として彼女と友人になりたかった。
呪いのせいで人を遠ざけてしまうのなら、そんな彼女に寄り添いたい。そうすれば俺は、俺に寄り添ってくれたハインセさん達のようになれる気がするんだ。
翌朝、俺は変わらずクロンスさんに話しかける。今日は珍しく教室ではなく敷地内の花壇で見掛けた。
「おはようクロンスさん。もしかして花の世話してるの?」
彼女は変わらず口を閉ざしたまま。かと思ったが、今日は違った。
「…………何が狙いなんですか。」
「え?狙いって、」
「私に話しかけて楽しいですか。楽しくないですよね。もう話しかけないでください。」
冷たいもの言い。だが俺にはそれが本心かどうか判断がつかなかった。だからもう少し食いつくことにした。
「俺は君と友達になりたいんだ。」
「………生徒なら私以外にもいますよ。」
「そう、だけど。なんか縁を感じるんだ。ほら入学式にぶつかって、席が隣で、」
「それが何ですか。」
クロンスさんは俺の言葉を一蹴する。自分でも今の発言は気持ち悪い気もしていた。確かにこれ以上は彼女の迷惑になるだろうか。
「私は、呪われているんですよ。神の恩恵が注ぐことはないんです。私を憐れんで話しかけるならもう、やめてください。」
「…………ごめん。」
俺は彼女言う通り、勝手に憐れんで手を差し伸べるなんて傲慢な考えでいたのかもしれない。クロンスさんにとってはそんな考えが透けて仕方なかったのだろう。
でも、友人になりたい気持ちは本物だ。
「それじゃあ俺と友達の練習をしてくれない?」
「練習…?」
「うん。俺は俺の我儘で君と友達になりたい。憐れみとかじゃなくて自分の為に。」
自分勝手な母親が大嫌いだった。でも、考えてみると俺だってそうなのかもしれない。ハインセさん達のように他者を思いやれる人間にはまだまだなれないかもしれない。
「俺は自分勝手に君に近付いた。だから、君も俺を利用して欲しい。互いの為に。どうかな。」
それでいつか、本当に友達になってほしい。
クロンスさんの返事を待つ。彼女は未だ悩んでいるようだ。俺よりもよっぽど優しい人だ。その決断を後押しするために、俺は息を吸い込んだ。そして、
「ステータスオープン!」
「っ!?」
俺の叫び声に反応して数値が目の前に浮かび上がる。その数値は俺のものだけじゃなくて、クロンスさんのものもある。
「凄いよクロンスさん!君の学力は200!俺の2倍だよ!」
「200…?どういうこと?」
「俺は他人の能力が数値で見れるんだ。」
「へ、へぇ…」
クロンスさんはドン引きだ。それもそのはず。いきなり叫びだしてわけの分からないことを言う人間なんて恐ろしいだろう。随分変わっているように思われるだろう。
「俺、こんなんだからさ。友達出来ないんだ。だから、友達の練習をどうしてもクロンスさんに頼みたいんだ!」
これが俺にとっての駄目押しだ。ステータスオープンと叫ぶのは恥ずかしかったので、効果が出ていることを願う。
「………………分かりました。友達の練習、付き合いますよヤシキくん。」
「!そっか!ありがとう!」
中々強引だったが友達候補を一人作ることに成功した。