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89.ただいま帰宅!異世界からの帰り!

 再び瞳を開いた時、目の前に広がるのは暗い夜空と虫の音が響く森だった。ひと呼吸おき、実感する。俺は異世界に帰ってきたのだと。


 「リザベラ先輩、もう遅いですし送っていきますか?」


 隣にいた先輩に聞く。流石にこの暗さだと彼女一人帰すのは危ない気がした。


 「………ありがとう。でも大丈夫。ちょっと、ひとりでゆっくり帰りたいんだ。」

 「分かりました。それじゃあ、お気をつけて。」

 「うん。またね。」


 別れを告げたところで、俺は一人帰路につくことにした。あのまま先輩を帰すのもどうかと思う反面、ひとりの時間を過ごしてほしい気持ちもある。

 だが、俺の心配は杞憂だろう。彼女は予想よりも遥かに冷静で、己の意思に従って選択を行えるのだから。そんな尊敬すべき先輩の背を見送った。


***

 「ただいま戻りました。」

 「おう!遅かったなヤシキ。夕飯出来てるぞ!」


 家に帰って迎えてくれたハインセさんの顔を見た途端、俺は無意識に息をついた。安堵からなのだろう。きっと、此処が自分にとって帰るべき場所になっているんだ。


 「美味しそうですね。」

 「まぁな。フィルの奴に言われてよ。ヤシキぐれぇの男児は栄養に気をつけろってな。」

 「なるほど…。なるほど…?」


 一瞬、随分まともなことを言っていると思ったが、テーブルに並べられている料理を見てふと思い直す。男児の栄養に気をつけろというアドバイスを、ハインセさんは本当に聞き入れているのだろうか。

 卓上に並べられた料理を眺めて聞く。


 「ハインセさん。野菜は何処に…?」

 「?あんだろ、ここに。」

 「い、いや、これは揚げ物ですよ。」

 

 ポテトフライを指さしたハインセさんに、思わず突っ込む。すると、おかしなことを言うといった様子でハインセさんは豪快に笑う。


 「おいおいヤシキ。芋は野菜だぜ?へるしーって感じだろ。」

 「…………ポテトがヘルシーかは俺の中で審議中です……。」

 「そーか。じゃっ、俺は先に食ってるぜ。」

 

 そう言ってハインセさんは揚げ物をフォークで取る。続々と口に運ぶ様は豪快で食いっぷりが良い。なんて、見ているうちに並べられた皿は空になっていく。

 このままでは俺の食べる分がなくなってしまいそうだ。


 「審議は後にして食べます!頂きます!」

 「おう。食え食え。」


 急いで手を合わせて揚げ物を取る。フォークで刺したそれを口に運ぶと、途端に口の中は揚げられた魚の風味が広がる。ポテトがヘルシーかなんてのは、どうでもいいように思える程の旨さだ。

 

 「美味しいです!」

 「まぁな。オレ特製だ。」


 俺達は2人で、揚げ物を平らげるのだった。

 

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