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79.習得!新たな技!

 課題が提示されてから1週間。俺はボールを透明化するため、肌見放さず持っていた。その効果を今日、試すのだ。

 

 家の中で手を組む。そうして神託の力を発動させ、視線を下にやる。そこには自身の腰があり、ボールが括り付けてある筈だ。しかし、見えない。透明になっているからだ。つまりこれは、


 「やったぁ!成功だぁ!」

 「!?………ヤシキか…。驚いたぜ…。」


 俺の声に驚いたのは、丁度リビングに入って来たハインセさんだった。今日も今日とて酒を片手にフラフラしている。


 「ヒック。成功って、どうしたんだオメェ。」

 「学校の課題です!身体以外を透明にするってやつだったんですけど、いま成功しました!」

 「へぇ…。そりゃ良かったじゃねぇか。ヒック。」


 成功した喜びも束の間。俺の中では別に試してみたいことが生まれていた。それはズバリ、透明化したボールを飛ばすことだ。

 このボールは元々、球体遊戯(ラウンダン)用のもの。なので、杖状の神具を使って操ることが出来る。


 俺はテーブルの上に置いた杖を握り、もう一方の手では腰のボールを取る。そしてボールを目の前に投げ、杖の先端をボールがあるであろう場所へと向けた。

 それから杖を動かすと、透明なボールが連動して動く感触を得た。中々地味だが、成功は成功だ。


 神託の力を解除して体の力を抜く。


 「やった。これで課題は達成だ…!」

 「良かったですね。ヤシキくん。」

 「!?」


 ホッとしていると、突然リビングの出入り口から声がした。その主はクロンスさんである。


 「クロンスさん!?いつの間に…。というか、俺の家知ってたんだね…。」

 「当然です。友達ですから。」


 何処か誇らしげな彼女。俺は前世含めて友人らしき友人が居なかったので、クロンスさんの言葉が真っ当かどうかよく分からない。


 「そ、そうなの?当然なの?」

 「はい。友として、住んでいる場所ぐらい把握していますよ。何もおかしなことではありません。」

 「そっか。…まぁ、クロンスさんが言うならそうだよね。」

 「いや待て待て!流されんじゃねぇよヤシキ!」


 ひとりでに納得していると、今の今までリビングでくつろいでいたハインセさんが突っ込む。

 彼は俺とクロンスさんの間に入るように大股でやって来て言う。


 「普通に考えてそのお嬢さんはやべぇだろ!?オメェ、家を教えた訳じゃねぇんだろ!?」

 「うーん…。でも、友人ですし…。」

 「いくらダチでもやべぇだろ!?そもそも勝手に入ってきてんじゃねぇか!」

 

 そういえばそうだ。しっかり施錠している筈なのに、クロンスさんはどうやって入ってきたんだろうか。不思議に思い、彼女を見ると朗らかな笑顔で答える。


 「安心して下さい。扉を壊した訳ではありません。こう、カチャカチャっと開けました。」

 「開けました。じゃねぇよ!何してんだオメェ!」


 どうやらクロンスさんはピッキングの技術も兼ね備えているようだ。随分多才だなぁ、なんて考えていると彼女はハインセさんの顔を見てハッとする。

 かと思うと、背筋を伸ばしてハインセさんに向き合った。


 「自己紹介が遅れました。私、ヤシキくんの友人のクロンスです。よろしくお願いします。」

 「なんで今更自己紹介すんだよ!?」

 「あ、俺も紹介するの忘れてた。クロンスさん、この人は俺の父親のハインセさん。血は繋がってないけど良い人だよ。」

 「なんでオメェまで!?」


 混乱するハインセさん。まぁ、突然、客が来たら驚くのも仕方ない。そうだ、折角なら3人でゆっくりお茶でもしよう。課題もひと段落ついたことだし。


 「3人でお茶しませんか?俺、用意してくるので。」

 「良いですね!私、甘いお茶菓子を持ってきたので待ってますね。」

 

 クロンスさんは持っていた紙袋を見せる。きっと美味しいお菓子に違いない。彼女の舌にはある程度の保証がある。

 やや浮足立って、俺はキッチンへと向かうことにした。


 「おい待てヤシキ!このお嬢さんをここに置いてくな!」

 「ハインセさん。もしかして甘いお茶菓子はお好きでなかったですか?」

 「そういう問題じゃねぇよ!?」


 2人はなんだかんだ仲良く会話をしているので、俺は安心してお茶をいれにいった。

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