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76.提示!進級のための課題!

 「よし。それでは次はヤシキ。」

 「はい!」


 俺は勢いよく返事をして教会内の奥へと進む。今は神託の力について学園の敷地にある教会で授業を行っている。

 神託の力は千差万別、各々によって効果は違う。その為、生徒一人ひとり向き合って制御や強化を目指すのだ。


 先生に呼ばれた俺は狭い個室へと入る。格子状の窓を隔てて、向かいには先生が座っている。窓は空いているので顔はばっちり見えた。

 椅子が置いてあるのでそこへ腰掛けて先生を見る。


 「今日は貴様の課題を発表する。」

 「課題ですか?」

 「あぁ。この寒さが明ければ貴様も2年だ。進級のためにも、神託の力を強化する課題を作成した。」


 先生の言葉に背筋を伸ばす。彼の言い方からすると、その課題とやらをクリア出来なければ2年になれないのかもしれない。

 俺はじっと次の言葉を待つ。すると、先生はふっと表情を崩して言う。


 「そう身構えるな。課題といっても難しいものではない。」

 「それじゃあ、一体どんな課題なんですか…?」

 「簡単さ。それは、貴様の神託の力で己以外の物を透明にすることだ。」


 自分以外の物を透明に。試したことのないこころみだった。だからこそ課題になったのだろうが。


 「………俺に出来ますかね…。」


 自信なさげに呟くと、先生は答える。


 「なら、ひとつヒントをやろう。神託の力は人間の意識が強く作用される。故に神託の力の名を受けた時にどのような能力かある程度決まるのさ。」

 「つ、つまり、自分が出来るって思ったことが出来るようになるってことですか?」

 「あぁ。理論上はな。だが人の意識は第一印象が大きく関わる。故にはじめに頭に浮かべた能力が使える。」


 ということは、俺は『無知なる愚者』という神託の力を受けた時、無意識的に透明になれる能力を思い浮かべていたのだろう。

 そして、その時透明に出来るのは自分だけだと考えていた。だから、能力の範囲は自分に限っていたのだ。しかし、だとすると疑問点もある。


 確かに、俺の力は体を透明にするが、それに伴って衣服も透明になる。これはどういうことか。もしかすると俺の頭では衣服も共に自己として認識しているのだろうか。

 それならば体と一緒に透明になる理由も分かる。


 俺は既に課題をクリアしているのでは、と思い期待を込めて先生へ聞く。


 「先生。俺、来ている服も透明にできます。これで課題達成ですか?」

 「残念だが、課題というのは今まで不可能であったことを可能にする為のものだ。故に貴様が透明にしなければならないのは衣服以外のものとする。」

 「わ、分かりました…。」


 思わず肩を落とす。なんだ。とっくに課題を終えてる、なんてことは無かったんだ。まぁ、そんなうまい話があるわけないか。


 「そう落ち込むなヤシキ。貴様ならこの課題を達成できるさ。何せ貴様はヤシキ・ルイターンだろう?」


 先生の言葉にはっとする。そうだ。俺はヤシキ・ルイターン。ハインセ・ルイターンの子だ。血はつながっていなくとも、そうなのだ。だから、こんなとこで気を落としている場合じゃない。

 俺は先生を見て、声を張り答える。


 「……はい!頑張ります…!」


 自分以外の透明化。その課題がスタートした。

 

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