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69.因縁!芸術倶楽部VS球形遊戯同好会

 「は、はぁ、はぁ。これで、13個…。」

 

 俺は肩で息をしながら彫刻を部室へ運ぶ。今、抱えているもので13個目。これでオッヘルくんの頼み事は終わりだ。遂に、彼から話を聞ける。

 そう思い、白い廊下を重い体で這いずった。部室へは無事に到着する。


 「ご苦労。まずは腰掛けて休むと良い。」

 

 オッヘルくんは涼し気な顔で椅子を勧める。俺はお言葉に甘えて円形の木組みでできた椅子へ座った。前においてあるテーブルへはカップが置かれる。


 「飲んで構わないよ。オリヴァ家が贔屓にしている店の茶葉だ。」

 「ありがとう。頂くね。」


 礼を言ってカップを手にする。喉はカラカラだったから、一気にお茶を喉へ流し込む。冷たい液体が体を通っているのを感じた。


 「感想は?」

 「えーっと、美味しい、と、思う。俺、貧乏舌だからよく分かんないけど。でもすっきりしてて飲みやすいよ。」

 「そうかい。たとえ君が貧乏人でも、その意見は充分大切さ。」


 褒めてるのか貶してるのかよく分からないが、役に立つなら良かった。

 そう思いながら、改めて運んだ彫刻達を見る。本当によく彫られている。随分丁寧に作られているから、何処かの美術館から運ばれたのかと思っていた。


 じっくり像を眺めていると、部室の扉が突然開く。入って来たのは1人の女生徒だった。


 「うーわ。何、この悪趣味なモノ。」


 彼女の気持ちは少し分かる。何せ、オッヘルくん自身が自分を模した全裸の彫刻だ。体の隅々まで見れる状態になっているのは、中々ない。恥ずかしさはないと言うが、見ている此方は正直恥ずかしい。


 「君か。なにか用事かな。」

 「分かってんでしょ。うちら、球形遊戯(ラウンダン)同好会に部室を渡せって言いに来たの。」


 腰に手を当てる女生徒は、どうやら球形遊戯(ラウンダン)同好会とやらに所属しているらしい。

 彼女はオッヘルくんを睨みつけながら言う。


 「こんなしょーもないモノ作ってんなら、さっさと部室渡してくんない?資源も時間も無駄にしてバッカみたい。」


 そう言った女生徒は彫刻のひとつを足蹴りする。蹴りを受けた彫刻は、靴跡を付けながら倒れた。

 音を立てて地面へ転がる彫刻。


 確かに、俺もこの作品が素晴らしいとは思っていない。だからといって、こんなぞんざいに扱うのは違うだろう。


 「ちょ、ちょっと。そんなに乱暴することないんじゃない。」

 「はぁ?誰、お前。あぁ、もしかしてこの倶楽部に入ってる奴?まぁ確かに、辛気臭そうな顔してるもんね。ここにぴったり。」


 俺の一言に、女生徒は余剰と思われるほどの罵倒を浴びせる。というか、俺はそんなに辛気臭そうな顔をしているだろうか。

 ほんの少しショックを受けていると、今まで沈黙を貫いていたオッヘルくんが咳払いをする。


 「悪いが彼は倶楽部の人間ではない。故に、そこまで言われる筋合いは無い。」

 「あっそう。でも、お前みたいな奴とつるんでるんだから倶楽部に居ようが居まいがどうでもいいよ。」

 「いいや。事実を確認するのは大切さ。彼は倶楽部の人間でない。これはしっかり認めて欲しいね。」


 オッヘルくんは冷静さを保ちながら女生徒と話す。部室の中は静かながらも、対立する2人の熱気に満ちていた。

 女生徒は睨み合ったかと思うと盛大に舌打ちをする。そして、転がる彫刻をさらに蹴飛ばす。


 「はっ!お貴族様は頭が硬いんですね。」


 厭味ったらしく、大袈裟に手を振る。それを受けてもなお、オッヘルくんは平然としている。


 「いや、以前よりかは柔軟になったさ。前は変に意地を張っていたからね。」


 彼のいう意地には思い当たりがあった。恐らく、エリーさんと対峙していた時のことだろう。あの時のオッヘルくんは『女のくせに』だとか何とかで難癖を付けていたのだ。

 その時と比べて、今の彼は随分落ち着いて物事を測っている気がする。


 「どーでも良い情報ありがとう。下らないこと言ってないで、早く部室を渡してくれるように願ってるよ。」


 俺達に背を向けて、女生徒は去っていく。


 部室にはやや欠けた彫刻が地面へ転がり残された。 

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