63.祭りのあと。片付けを忘れず!
収穫祭を終えた俺達は保健室へ向かった。傷付いたクロンスさんやハインセさんがそこで治療されているとふんでのことだ。
予想通り、保健室には人が居た。
ずらりと並ぶベッドの一角に、クロンスさんが横たわっているのを見つける。俺は直ぐ様駆け寄り、そして頭を下げた。
「クロンスさん!ごめん!俺のせいで、」
「ヤシキくん。謝らないでください。言ったじゃないですか。ああなることを理解して、私は貴方達と友人になったと。」
「……でも、アンタを傷付けたことには変わりないわ。」
隣にいるエリーさんはそう言う。俺も彼女に同意だ。どれだけクロンスさんが覚悟をしていても、友に攻撃されるのは嬉しいことじゃないだろう。
すると少し思案した後、クロンスさんはある提案をした。
「それじゃあ、一緒にご飯でも食べましょう!」
「ご飯…?」
「はい!勿論、私の好きなものです!それでちゃらってことにしませんか?」
「そ、そんなことでいいの?」
恐る恐る聞く。確かに彼女は食べることが好きではあるものの、それが贖罪になるとは思えなかった。しかし、クロンスさんは満面の笑みだ。
「そんなことではありませんよ!ほら行きましょう!クラスで食材が余ってるかもしれません!」
そうして俺達は教室へ戻る。外はすっかり暗くなっているが、後片付けで人は残っていた。俺達もその中に入って、教室を片す。
それを終えると、各々残った料理を食べることになった。
紙皿を持ったクロンスさんが近付いてくる。
「ク、クロンスさん、そのクリームの山は一体…」
「余ってたので全部載せてもらいました!ヤシキくんも食べますか!」
「胃もたれしそうだからいいかな…」
「アンタ年寄りみたいね…。」
そうは言うが、クリームなんて適量だからこそあれ程美味しく感じるんだと思う。多ければいいってもんじゃない。と、一人考えてこんがり焼かれた生地を手にする。
程よい狐色のそれは美味しそうだ。
「むっ、美味しい。」
1日の疲れが吹き飛ぶようだった。なんといっても、生地に包まれている甘味が体の髄にまで届く。
「ふふっ。ヤシキくん。もっと美味しくなる魔法がありますよ!」
「魔法…?」
「はい!」
得意げなクロンスさんが差し出したのは、彼女お手製のスパイスだった。俺はそれを受け取って料理にふりかける。
そして口にしてみる。
「………美味しい。」
「どう美味しいですか!」
「えっと、スパイスがさっぱりしてて、甘さがくどくない感じになってて、」
「それで!それで!」
「クロンスちゃん落ち着きなさい。ヤシキの頭じゃ食レポなんて期待できないわ。」
「酷い言いようだね!?」
確かに俺は賢いほうじゃないけど、一生懸命感想ぐらいは捻り出せるよ。
そんなふうに料理を食べ終える。お腹がいっぱいになったので、クロンスさん達の分も受け取って紙皿を捨てることにした。
が、エリーさんはともかく肝心のクロンスさんは紙皿を手放さなかった。
「何してんのよクロンスちゃん!早く離しなさい!」
「い、嫌です!まだ食べるんです!」
「流石に食べ過ぎだよ!俺達、クロンスさんには健康で居て欲しいんだ!」
「心の!心の健康の為に!食べていたいんです!」
「馬鹿言うんじゃないわよ!血糖値で体が悲鳴あげるわよ!?」
紙皿にしがみつくクロンスさんを何とか剥がして、食事を終わらせる。良かった。クロンスさんの健康は死守できたようだ。
俺はエリーさんと共に胸を撫で下ろした。
口惜しそうにしながらも、どこか、クロンスさんは嬉しそうだ。
「クロンスさん、どうしたの?」
何かあったのかと、聞く。対する彼女は微笑みながら答える。
「いえ。ただ、楽しいだけです。こうして友人と過ごすのが。」
彼女は時々、恥ずかしいぐらい真っすぐものを言う。今だってそうだ。でも、俺も友人と過ごせることは、とても楽しい。前世ではこんなに楽しい思いをしなかったから。
クロンスさんは口もとを綻ばせながら、言葉を続ける。
「だから、どれだけ呪いに苛まれても、離れてなんて行かないでください。何かあってもこうして、また、一緒にご飯を食べましょう。」
「………うん。」
「…………えぇ。」
俺とエリーさんは頷く。今度こそ、友としてクロンスさんと過ごすことを誓うのだった。




