6.,曲がり角でぶつかったあの子はクラスメイト。仲良くしようよ!
無事入学式へ出席出来た俺は割り当てられた教室に移動する。幸い、出会った教師からクラスについては教えてもらえたので迷うことは無かった。
俺は自身の教室へと入る。そして席へついた。隣を見ると籠いっぱいに積まれたトカゲを食べる女子生徒がいた。
入学式前にぶつかった子だ。
「おんなじクラスだったんだね。俺、ヤシキ。よろしく。」
「………………。」
「?あ、あの、よろしく?」
「…………………。」
少女は黙ったままトカゲを貪り食う。俺の事が見えていないのだろうか。いや、でもこっちを向いてはいるんだ。そんな筈はない。
そうこうしていると教師が教室へ入って来た。恐らく担任だろう。
「おはよう諸君。さぁ席につけ。全く最近のガキは落ち着きが無くて敵わん。」
この声はハインセさんとやり取りをしていた人のものだ。つまり彼の友人。生徒をガキだなんて言うが、良い人なのだと思う。
「まずは入学おめでとう。これから貴様らはこの学び舎で過ごすことになる。天上の神に恥じぬよう勉学に励め。」
形式的な文言を続けて、担任はホームルームを終えた。今日はこのぐらいで終わりだそうだ。
さて、特に用事もないので帰るとするか。そう思った矢先あることに気付く。
俺はハインセさんの家を知らない。どうやって帰れば良いんだろう。彼に抱えられている間、おおよその方角は把握したがそれでも迷ってしまいそうで怖い。
どうにか道案内をしてくれる人はいないだろうか。
「…………ねぇ、ハインセさんっていう人の家知らない?」
思い切って隣にいる女子生徒に聞いてみる。彼女は変わらず干したトカゲを食していた。
「…………やっぱり、何でもない。」
あんまりにも応答がないので諦めることにした。それにしてもどうして俺は彼女に無視されているのだろうか。何かした覚えはないのだが。
「ハインセっていう人のことなら担任に聞けばどうですか。」
「確かに。ありがとう。君の名前、聞いてもいい?」
「…………。」
「あ、あれ?」
口を開いたかと思えば、女子生徒はまた黙りこくってしまった。まぁ話はできたことだし、取り敢えず感謝をして担任を探すことにした。