53.不可思議!収穫祭の噂!
準備を終えて今日はいよいよ収穫祭当日だった。俺は朝から教室へ向かい、試行錯誤した料理の用意をする。
基本、球形遊戯の出番があるまでは教室で料理を提供することになっている。勿論、クラスメイト全員で交代しつつなので、他のクラスを回ったり球形遊戯の観戦に行くことも出来る。
提供する生地を焼いていると、クロンスさんが話しかけてきた。
「良い感じですね。」
「うん。味は間違いなしだよ。」
「ふふっ。なら良かったです。」
微笑む彼女は、生地の中に詰める具材を用意する。クロンスさん特製のスパイスもあるので、他とは一味違う物になること間違いなしだ。
そうして用意を進めているとエリーさんもやって来た。
「そういえばアンタ達は収穫祭の妙な噂、聞いた?」
「噂…?特に聞かないけど。」
「はい。私もです。」
皿を手にしたエリーさんは休みがてら、話をしてくれた。
「聞いた所によると、収穫祭には神がお忍びでくるとか何とか。」
「へぇ。もし会えたら直接感謝したいですね。」
確かに、収穫祭は神への感謝をする為に行うものなので、出会えたら直接感謝をすることはおかしくはない。
がしかし、俺個人としては神へ感謝する気持ちなど毛頭ない。その為、あやふやな返事をしていたが、エリーさんは俺と違った。
「感謝ねぇ…。アタシは文句言うわね!アンタのせいで呪われた人間がどんなに苦労したのかって!」
彼女は神様相手でも怯むことはないようだ。でも、エリーさんの言いたいことも分かる。俺も神へ文句を言いたくもなるからだ。
何せ、クロンスさんやハインセさんは呪いのせいで大変な思いをしてきた。本人でないにしても、身近な人が苦しむのは嫌だ。
「エリーちゃんは元気ですね。」
まぁ、当の本人はこうして鷹揚に笑っているのだが。
「あっ、そろそろ生地が焼けるよ」
「よぉし!気合入れて盛りつけるわよ!」
「はい!」
こうして収穫祭の一日が始まった。
***
料理の提供も進んだ頃、俺達は休憩に入っていた。折角なので何処か回ろうと思い、クロンスさんとエリーさんに声をかけることにした。
「クロンスさん。良かったら他のクラスを見に行かない?どんな食べ物出してるか気になるからさ。」
「敵情視察ですね!分かりました!光るものがあったら盗んできましょう!」
「やる気十分だね…!」
クロンスさんは快諾してくれたので、エリーさんを探す。だが、彼女の姿は見当たらない。何か用事でもあったのだろうか。
「エリーちゃんは既に、敵地へ赴いたのかもしれませんね…。」
「成る程…。じゃあ、他のクラスに探しに行こっか。」
俺達は一人で戰場へ向かったであろうエリーさんを探しに行った。しかし、どれ程探してもエリーさんは見つからない。どの教室にも彼女の姿は見当たらなかった。
行き違いになったかもしれないと考え、自分達の教室へ戻ることにする。
その、道中。白い廊下の隅に見覚えのある生き物がいた。それは蛇だ。エリーさんが神託の力で操っていた蛇。何故、それが単独で、こんな場所にいるのか。
額には汗が伝い、体温が下がっていくのを感じた。
「…………クロンスさん、これ、エリーさんの蛇だよね…。」
「はい…。もしかして、エリーちゃんの身に何かあったのかもしれません…。」
ただの祭りである収穫祭。その、長い一日が始まった。




