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52.練習!球形遊戯《ラウンダン》攻略!

 収穫祭の準備も進んだ頃。俺には一つの悩み事があった。それは球形遊戯ラウンダンについてだ。収穫祭当日に出す料理は自信があるものの、球形遊戯ラウンダンは別。

 何せ、運動が得意というわけではないのだ。練習をしても、上達できている気がしない。


 そんな気持ちが伝播したのか、休日、家にいる時に顔の赤いハインセさんは俺に質問をしてきた。


 「ヒック。そういや、そろそろ収穫祭じゃねぇか。準備は進んでんのか?」

 「えっと…料理の方は…。でも、球形遊戯ラウンダンは自信ないです…。」

 「そうかそうか。……うしっ!なら練習するぞ!ついてこい!ヒック。」


 そう言ってハインセさんに連れてこられたのは学校だった。そう言えば、彼はここの卒業生なのだ。だからか、スムーズに学校へ入り、球形遊戯ラウンダンの用意をした。


 コートに立ったハインセさんは神具を手にして言う。


 「ヤシキ!オメェ、神託の力は使ってるか!」

 「え、使ってない、です。」

 「なら使ってみろ!ヒック。」


 彼の言う通り、俺は早速手を組んで神託の力を発動させた。そうして体は透明になったが、すぐに意味のないことだと気づく。

 何せ、コートに敷かれた砂に足跡がついてしまうからだ。これでは居場所はバレる。わざわざ神託の力を使う必要はない。


 「……ハインセさん。これじゃあ神託の力を使わなくても…。」

 「…………そうだな…。」


 どうやらハインセさんも予想外だったようだ。俺もそう思う。だって、透明になるのは体や身につけている物だけで、所持している神具は視界に写ってしまうのだから。

 これでは神託の力も使いようがない。


 練習に意気込んでいた心は沈む。折角神託の力を活用しようと思った矢先に、これなのだ。


 「はぁ。…俺の神託の力って、何でこんなに使いにくいんだろう…。」

 「ヒック。そう落ち込むな!神託の力無しで練習するぞ!」


 そうしてしばらく球形遊戯ラウンダンの練習を終えて、休憩をすることにした。

 息の上がっていないハインセさんと違って、疲れ切った俺はその場に座り込む。ハインセさんは酒飲みだというのに体力が随分あるようだ。


 「……ハインセさん、凄いですね。お酒飲んでるのに…。」

 「はっ!知ってるかヤシキ。酒は万病に効く薬なんだよ!」

 「薬のせいで病気になっても知りませんからね…。」


 この人は本当に不思議な人だ。酒は飲んでいるものの、強さや体力が衰えているようには見えない。それに、この人の収入源がイマイチ分からない。俺はこの人のことを何も知らないようだ。

 何だか寂しく感じて、少し質問をする。


 「………ハインセさんは以前、どんな仕事をしていたんですか?」


 今現在は家で酒を飲みふらふらとしているので、以前の仕事を聞くことにした。


 「仕事…?さぁな。俺は生まれてこの方、仕事なんかしたことねぇよ。ヒック。」

 「ま、またまた。だって、ハインセさんお金持ってるじゃないですか。そのおかげで俺も生活できていますし…。」

 「何もしなくたって、金が俺のとこに来んだよ。相思相愛ってやつだな。」


 はぐらかすハインセさん。それほど聞かれたくないことなのだろうか。そう思っていると、後ろから聞き覚えのある声がした。


 「ソイツは以前、研究職をしていた。内容は呪いについてだ。」

 「!先生!こんにちは!」

 「あぁ。こんにちは。」


 振り向くと、そこには俺の担任がいた。彼はハインセさんと親しげだったが、過去の職業まで知っているとは。もしかすると、随分長く一緒にいたのかもしれない。


 「オメェな…。」

 「ヤシキに伝えるぐらいなら構わないだろう?私に伝えてほしくなければ自分で話すことだな。」

 「ちっ。」


 相変わらず、ハインセさんは先生に悪態をつく。だが、どちらも気にしていないのでいつも通りなのだろう。

 

 バツの悪そうなハインセさんは俺を見ると、渋々ながらも口を開く。


 「アイツの言う通り、俺は呪いの研究してたんだ。」

 「今は辞めてしまったんですか。」

 「……………あぁ。………オメェは、神とやらの声を聞いたことがあるか?」


 突然の質問に驚く。いや、呪いは神から見放されてかけられるものだから、神が無関係ではないのだが。それでも、急に神の声なんて言われると驚いてしまう。


 「えっと…神託の力を貰う時に聞きました。」

 「そうか…。…俺はいつも聞こえちまうよ。今だってそうだ。喧しくて仕方ねぇ。」

 「それは、呪いの研究のせいなんですか?」

 「あぁ。研究を邪魔するみてぇに、頭の中で、ずっと喋りやがる。だから、俺は研究を辞めたんだよ。」


 彼の話を聞いて納得のいったことがある。どうしてハインセさんはあれ程酒を飲み続けていたのか不思議だったのだが、年がら年中頭の中で声がするのなら話しは別だ。

 ハインセさんは騒がしい声を打ち消すために、わざと酔おうとしていたのではないか。声とやらがどれほど煩いかは知らないが、それはある意味で呪いのように感じる。


 「そんな事があったんですね…。…ハインセさん、ごめんなさい。今までただお酒が好きで飲んでるんだと思ってました。」

 

 頭を下げる。そして上げると、先生とハインセさんが顔を見合わせた後、口々に言う。


 「いや、酒は普通に好きだぜ。ヒック。」

 「え、」

 「何やら深読みをしたようだが、コイツが酔っ払いなのは変わらんぞ。」

 「そ、そうなんですね…。」


 何だか謝って損した気分だ。


 それはそれとして、俺とハインセさんは引き続き球形遊戯ラウンダンの練習をしてから家に帰った。

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