50.来たれ!収穫祭!
夏休みも終わり、涼しい風が俺を包む季節。学園は浮足立った空気が漂っていた。それもその筈、この季節には収穫祭という祭りがあるらしい。収穫祭とはその名の通り、神による豊作を感謝して行うものだ。
祭り、といっても皆で食事を楽しんだり、球形遊戯をしたりするだけ。なので用意らしい用意は、調理と球形遊戯ぐらいになる。
各クラス、その2つの準備を進める。勿論、俺も。
「………クロンスさん。何入れようとしてるの…。」
放課後、調理室にて収穫祭で出す料理を練習していた俺は、隣にいるクロンスさんにそう聞く。
「隠し味のトカゲです!」
「隠せるわけないでしょ!やめなさい!」
エリーさんが咄嗟にクロンスさんの奇行を止める。危ないところだった。あのまま調理を続けていたら、お祭りが縁起の悪いものになってしまう。トカゲ入りの料理なんて万人受けはしないのだから、今回は我慢してもらわなければ。
収穫祭で出す料理はメインからデザートまで一品選べる。そして、クラスでどんなものを作るか吟味して練習するのだ。
俺達のクラスはデザートよりの、軽くつまめるものを作る。生地を焼いて、各々好きな食材を詰め込むアレンジしやすいものだ。とはいっても、トカゲはアレンジの範疇を超えているが。
俺はパリッとした生地の中にチーズを。エリーさんは生クリームを。クロンスさんは渋々トカゲをしまって、果物を入れた。
実食してみると確かに美味しい。だが、想像の範疇を超えないというか、無難というか。
クロンスさんもそう思ったのか、顎に手を当てて考え事をしているようだった。
「……何か足りませんね…。ここは、スパイスを加えてみませんか?」
「スパイスかぁ。俺のはともかく、2人のは甘いやつだし合わないんじゃないかな。」
「いえ。そうとは限りませんよ。むしろ、アクセントになる場合もあるんです。……よし。私、スパイス作ってきます!!」
意気揚々と、彼女は調理室を出ていった。俺達も追おうと片付けや神具の火を消して調理室を出る。
「なんか、ヤケにやる気ね。クロンスちゃん。」
「まぁ、楽しそうだから良いけどね。」
「そうね。………アタシ達も楽しまなきゃ!」
そんなこんなでエリーさんと来たのは校内の植物園だった。今日も相変わらず植物が鬱蒼としている。そんな中、クロンスさんはしゃがみ込んで植物を吟味していた。
俺達はクロンスさんに近付く。彼女は真剣な眼差しで植物を見つめている。かと思うと、急に茎を持って植物を引っこ抜いた。そして、ポケットからナイフを取り出して根と茎を切り離す。
「クロンスさん、それをスパイスにするの?」
「はい。これは根を炒めると香りが出るんです。早速戻って試しますよ!」
来たばかりではあったが、クロンスさんは植物園から調理室へと戻ろうとする。俺とエリーさんも、振り回される形で彼女についていくのだった。




