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5.魔法学校に入れてくれるらしいです。一目置かれる存在になるぞ!

 鍛錬を断られた俺を前に、酔っ払いは思い出したかのように言う。


 「ヒック。そういや、オメェ名前はなんだ。」

 「俺は……ヤシキです。」

 「へぇ聞かねぇな。」


 それもそうだろう。前世の名字を横流しにしたのだから。ちなみに名前である永遠(とわ)はあまり好きではないので名乗るつもりはない。


 「貴方は?」

 「ヒック。俺はハインセ。」

 「よろしくお願いします。ハインセさん。俺に出来ることがあったら何でも言ってください。」

 俺はハインセさんに頭を下げる。今、この人に捨てられたら途方に暮れてしまう。だからどれだけ酔っぱらっていようと失礼があってはいけない。


 「オメェに出来ることだぁ?ガキなんだから、ガキらしく学校に行くんだな。」

 「えっと…。それじゃあ働き口とか、教えてもらえませんか。その、俺金が無くて。」

 「金だぁ!?んなもん、浴びるぐらいある!ガキは働く前に勉強でもしろ!確かこの辺に魔法学校があった筈だな…。ちょっと待ってろ。」


 そう言うとハインセさんは部屋の中にある水の張って口の開いた杯の方へと行く。そして小瓶を手に取り、中身を杯へ注いだ。

 すると杯の中はみるみる色を変えて、透明な水が赤色となる。そこに向かってハインセさんは叫ぶ。


 「もしもしぃ!俺だぁ!ヒック。」

 杯の中からはハインセさんと会話するように別の声が聞こえた。


 「………ハインセか。何だね。」

 「オメェんとこの学校、ガキ足りてねぇよな!?一人、活きのいいヤツを入学させてやる!ヒック。金ならあるからよ。どうせ、名前かけば入れるとこだし良いだろ?」

 「はぁ。入学式は今日だぞ。あと数分で始まる。」

 

 俺はとことんついていないらしい。これでは待望の魔法学校とやらでの生活は出来ない。


 「あ?数分なら問題ねぇよ。で、入学はどうなんだ。」

 「まぁあの自由な校長のことだ。入学式当日に一人生徒が増えても構わないだろう。」


 いや構うだろ。どんだけ自由な校長なんだ。魔法学校とやらは本当にそれでいいのか。


 「そんじゃあすぐにガキを送る。」

 「それとハインセこれは友人からのありがたいアドバイスだが、昼間から酒を飲むのは、」

 「じゃあな。」


 そう言ってハインセさんは窓から杯の中の水を捨てた。彼の友人からのアドバイスは耳に届かなかったようだ。

 

 「つぅわけで行くぞヤシキ。」

 「その、有り難いんですが俺、本当に何も持ってなくて、」

 「あ?制服なら俺のお古がある。教材だって、入学式終わってから買うだろ。行くぞ。」

 「え、わぁ!?」


 ハインセさんは俺に古びたローブを被せて抱える。何をするのかと思えば俺を抱えたまま、膝を屈める。そして、思い切り空へ跳躍した。

 スーパーマンか、この人は。


 そんなことを考えていると視線の先には町が見えた。森を抜けた先にあったようだ。

 そしてその中でもひときわ大きな建物。恐らくそれが魔法学校なのだろう。


 ハインセさんは俺を抱えたまま、魔法学校の敷地へ着地する。


 「金と紙とペンは入ってる。これ持ってけ。ヒック。」

 「あ、ありがとうございます。」

 「おう。俺の名前出せば、オメェのことは教師の奴らも受け入れるだろうぜ。そんじゃあな。」

 そうしてそそくさと飛んでいくハインセさんに、俺は頭を下げた。何だかんだ、あの人は良い人だ。ああいう人が来世では浄土へ行ったりするんだろう。 

 

 そう思っていると一つの問題に直面した。俺は今、何処にいるのか分からないのだ。空から見た魔法学校は広かった。

 これでは入学式とやらに間に合うだろうか。とにかく、人を探そう。せっかくハインセさんが取り計らってくれたのだから入学式に遅れるわけにはいかない。


 魔法学校らしき建物に入り走る。角を曲がる。そこで体に衝撃が走った。


 「きゃっ。」

 「わっ!?ご、ごめん。立てる?」

 ぶつかってしまったようだ。尻もちをついた女子生徒に手を差し伸べる。その時、俺の頭に何かが落ちてきた。

 何だ、と手をやると


 「と、トカゲ…?」

 干からびたトカゲのような生き物だった。


 「それ、私の朝ごはんです。」

 「え、食べるの?」

 「はい。あっ、遅刻しちゃう……」


 女子生徒は俺からトカゲをぶん取って走り去る。呆気にとられたが、俺も急がなくては。

 去っていった女子生徒を追いかけることにした。彼女について行けば入学式へ参加出来るだろう。

 

 

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