41.夏の醍醐味!海をエンジョイ!
長期休暇も中盤に差し掛かった頃、俺はある誘いを受けた。それは海へお出かけの誘いだ。どうやらエリーさんの家であるゲレター家はプライベートビーチを持っているらしく、クロンスさんと一緒に行こうということだった。
夏季講座で疲れ果てた俺には降って湧いたチャンス。夏らしさ全開のイベントに胸を弾ませ、海へと向かうことにした。
2人と合流し、早速水着に着替える。着替えといってもすぐに終わったので、先にビーチで待つ。今日も今日とて照りつける日が肌を焼く。
少しすると白い砂浜に2人の少女が現れた。クロンスさんとエリーさんだった。2人は何やら話しているようだ。クロンスさんの驚く声が耳に届く。
「エ、エリーちゃん細くないですか!?しっかり食べてます!?」
「食べてるわよ。でも、余分な脂肪をつけるわけにはいかないもの。クロンスちゃんも無駄な間食は控えなさい。」
そう言ったエリーさんはクロンスさんの腹を見る。何を言いたいか察したのか、クロンスさんは頬を膨らませて反論する。
「言っておきますけど私、太ってませんよ!エリーちゃんが細すぎるだけです!ですよね!?ヤシキくん!」
何とこっちに飛び火してきた。困ったな。返答を誤るとセクハラになりかねない。ここは慎重に答えなければ。
「えーっと、あっ!学校でやった健康診断の数値次第じゃないかな。ほら、数字は嘘をつかないって言うし!」
うん。我ながら可もなく不可もない発言だ。健康診断での肥満率は無理のある設定をされてはいないだろうし、数字という確固たるものを根拠としている。問題はないはず。
「……健康診断の結果を元にするなら、クロンスちゃん痩せたほうが…。」
「わ、わぁー!?もうこの話は辞めにしましょう!さっ!海を楽しみますよぉ!」
エリーさんの言葉は聞かなかったことにしよう。女子のアレコレを想像するのは良くないしね。ただ、クロンスさん。どうか早死にしない食生活を送ってほしいな。
気を取り直して俺達は海で楽しむことにした。
「今日は波が良い感じね。2人はサーフィン、したことある?」
「ないですね。」
「俺も。」
「よし!ならアタシが教えるわ!」
サーフボードを3枚手にしたエリーさんは握りこぶしを固めていた。何やら、サーフィンに対して熱意が凄い。激しい日差しも、彼女の前では逃げてしまいそうだ。
そんなエリーさんの熱血指導によって、俺とクロンスさんは海上でサーフボードへ乗る。のだが、これが如何せん難しくてすぐにバランスを崩してしまう。
隣を見ると、俺と違ってクロンスさんは体を小さくひねりながらもサーフボードの上に立っていた。
「わ、わぁ!?」
「大丈夫ヤシキ?アタシが支えるからゆっくり行きましょ。」
「う、うん。ありがとう。」
サーフボードから落ちた体を起こして、再び上へ立とうとする。今度はエリーさんが俺の足を支えてくれた。ふらついても、彼女がしっかりと抑えてくれるおかげでどうにかたつことが出来た。
しかし、本当にこれで波に乗れるのか不安だ。そう思っていると、早速水が盛り上がって向こうから波が押し寄せてきた。
「安心しなさい。アタシが抑えとくから。」
「で、でも波が来てるよ?」
「それでも足ぐらいなら固定してあげられるわ。だから体の力を少し抜きなさい。」
彼女に言われた通り、深呼吸をして肩をはじめとした全身の力を抜く。
波が目前までやって来た。それは、近くで見ると小さかったが、俺にとってそんなことは関係なかった。
一瞬。波が俺の足元を通り抜ける。それに呼応してサーフボードが揺れ、不思議な浮遊感がやって来た。たった一瞬の出来事。それでも、何だか心地よくて、
「どう?初の波乗りは?」
「……うん。楽しい、かも。もう一回やりたいな。」
「何回だって付き合うわよ。いつか、3人で波を乗り回したいわね。」
そうだね、と言いかけたその時。甲高い声が聞こえた。どうやら沖の方からだ。随分深い所に人がいるなと思ったが、よく考えればここには俺とエリーさんとクロンスさんしか居ないのだ。
つまり、遠くにいる影はクロンスさんのもので違いない。
「いやっほーっ!エリーちゃん!ヤシキくん!今日の波は最高ですね!」
クロンスさんはいつの間にか、いっぱしの波乗りになったらしい。彼女の元気な声が青空に響き渡る。
俺も負けてられないな。
「エリーさん。俺もクロンスさんのいる場所に行きたい…!」
「その心意義はよし!でも、まだ危ないわ。これからちゃんと波に慣れてからよ!」
こうして俺達は一日中、サーフィンに明け暮れた。




