40.いざゆかん!ひんやりスイーツの開発へ!
長期休暇へ入った俺は、以前と変わらず学校へ来ていた。残念ながら夏季講座が待ち受けているので、家で涼みながら過ごすというのは夢になってしまった。
とはいっても夏季講座は午前中のみなので、勉強から解放された俺は学校を出ようとする。しかし、ふと足を止めた。
「あれ?クロンスさんにエリーさん。こんな所でどうしたの?」
学校の門を出る直前、俺は2人の友人を見かけた。彼女らは成績も良い筈なので、夏季講座に参加していた訳では無いだろうに。
「あー、それは、」
エリーさんは何やら口籠る。言いにくい用事なのだろうか。そう思っていると横にいるクロンスさんが元気に指を立てて説明を始めた。
「ヤシキくん、よく聞いてくれましたね!私達は今、新たなスイーツの開発をしているんです!」
「新たな…スイーツ…ねぇ…」
別段、おかしな表現でもない。だが、発言をした人物が問題だ。スイーツを作ろうと言っているのはよりにもよってクロンスさんなのだ。ゲテモノをこよなく愛する彼女が作るものが、どんなものなのか想像には難くない。
いや、でも待って欲しい。クロンスさんの趣味は確かに未知なものではあるが、彼女の勧めたスイーツは美味しかった記憶がある。つまり、希望はまだあるのだ。
そう思って顔を上げたが、視線を交わしたエリーさんは俺の考えを察したのか首を振った。それも、残念そうに。
「………クロンスさん、一応聞くけど、どんなスイーツを作るの…?」
「小鳥を凍らせようと思ってます!最近は暑いですからね。ひんやりスイーツで、リフレッシュです!リフレッシュ!」
やる気に満ち満ちているクロンスさん。成る程。隣のエリーさんがげんなりしている理由がはっきりと分かった。
「折角ですしヤシキくんも行きましょう!出来たらご馳走しますよ!」
「え、俺は、その、」
「行きたいわよね!?そうよね!?ほら、行くわよヤシキ!」
「ちょ、ちょっとエリーさん!?俺の腕もげるよ!?」
エリーさんはここぞとばかりに俺を道連れにしたいようだ。恐るべき力で腕を引っ張る。というか、よく見たら俺の腕に彼女の蛇まで巻きついている。逃すつもりはないようだ。
そうして半強制的に俺は学園の敷地内の植物園へ来ていた。ここは森と隣接しており、つっきれば森にたどり着くことが出来る。
園内は白を基調とした建物になっており、通気性のためか直接外とつながっている場所が多い。そこからはささやかな風が運ばれてくる。
「……クロンスさん、まさかここの鳥を使うつもり…?」
「はい!きっと美味しいですよ!」
「か、勝手にとっていいの…?」
「ヤシキ。残念ながら、植物園内ではある程度の自由がきいちゃうのよ。」
自由はきくといっても、中にあるものをとっていいのはききすぎじゃないかな。とは思ったが考えてみると、ここの校長は自由な人なので不思議ではない。
「まぁ、園長が定期的に測定してるから取りすぎないようにはなってるみたいよ。」
「へ、へぇ。」
エリーさんの話を聞いている間も、クロンスさんは血眼になって小鳥を探している。さながらハンターといったところか。ギラつかせた視線と、残像すらも見える挙動が恐ろしい。
そんなハンターから一歩、離れた所にいると、鳥の羽ばたく音がした。とはいっても彼らのいる場所は俺達の上空。すぐ捕まえられるとは、
「っ!よし!取りました!」
「はやっ!?というか、いつの間に木の上に!?」
クロンスさんは俺の想像を超えて俊敏に木へ登り、小鳥を捕獲した。あぁ、この子はこれから凍らされてアイスにされるんだ。アーメン、と心の内で十字架を切る。まぁ、俺はキリシタンというわけではないが。
そんなふうに鳥を見守っていると、俺の腹がなる。そういえば、昼を食べていなかった。
「お、俺、お昼まだだから家に帰るね。それじゃあ…。」
「そうなんですね…では小鳥アイスはまた今度!お気をつけて!……………では、凍らせに行きましょう!エリーちゃん!」
「……………………恨むわよ…ヤシキ…。」
クロンスさんに引きずられるエリーさんへ小さく敬礼をして、俺は植物園を出る。ごめんね、エリーさん。でも、流石に小鳥アイスは勘弁したいかも。
そうして一人を生贄に、俺は帰路へついた。




