31.脱走した神獣。奴を捕獲せよ!
「おはよう諸君。早速だが話がある。よく耳を傾けろ。」
朝のホームルームで担任は神妙な顔つきをして話を始める。一体どんな話が始まるのかと、俺は身を固くして椅子に座った。
「今朝、我が聖グロッタ学園にて神獣が脱走した。教員一同で探しているが、諸君らにも協力をしてほしい。」
「先生!神獣ってどんなのですか?」
一人の生徒が手を挙げて質問をする。
「その名の通り神託の力を使う生き物さ。姿は、そうだな。小さな飛竜のようなものだ。」
先生はそう言って黒板に簡単な絵を描く。ゆるゆるとした線で描かれた飛竜はゆるキャラのように可愛いらしかった。
「そういうわけで今日の授業はなしだ。皆には魔法生物の探索をしてもらうからな。」
その一言に、俺も含めて多数の生徒がガッツポーズをした。トラブルといえども、授業がない日というのは浮足立つものだ。
担任の話も終わり、俺達は早速神獣とやらを探すことにした。俺はクロンスさんとエリーさん達と探す。
「うーん。神獣って何処にいるんだろうね?」
ふらふら行く当てもなく進もうとした俺に、エリーさんは紙束を眺めながら言う。
「まずどんな神獣なのか確認するべきよ。資料はアタシが持ってるわ。」
「さすがエリーちゃんですね。」
クロンスさんは揚げた蜘蛛を口に含めながらエリーを褒める。彼女は今日も今日とて間食をしている。
「そうしてると研究者みたいだよ。」
「研究者…まぁ、悪くない響きね!」
嬉しそうにしながら、エリーさんは神獣の詳細を語り始めた。
「聖グロッタ学園にいる神獣は姉妹校から貰ったものらしいわね。どうりで見かけないわけだわ。」
成る程。付近に生息していない神獣も、わざわざ姉妹校から貰ったのなら学園にいることも理解できる。
そして俺達はエリーさんが立てた予想に従い、めぼしい場所を巡る。校内や敷地内には他の生徒や教師が溢れていた。
「うーん、居ないですねぇ。」
「そうね…。よし、次はここよ。」
そう言ったエリーさんが目指したのは、巨大な木のもとだ。巨木は学園の中庭に生えており、中には人が入れるほどの空間が出来ている。
俺達は天高く伸びるその巨木へと入った。ご丁寧に螺旋階段状になっている足場を進んで、さらに上へと進む。
「あっ!いたよ!」
上へ進む途中。幹の生える場所に、一匹で佇む生き物がいた。それこそ、探し求めた神獣だ。相手は此方に気づいていないのか、遠くを眺めている。
「気付いたら逃げられるわね…。」
「それじゃあ俺の神託の力で行くよ。」
俺の神託の力『無知なる愚者』は自身を透明にさせる。これならば神獣に気づかれまい。
作戦は建てられたが、それはそれとして少し怖い。何せ神獣のいる幹は太いとは言えず、俺が乗れば折れるかもしれないからだ。
「…………お、押さないでね。」
「?押さないわよ?」
「いいえ、エリーちゃん。こういう時は押すんですよ。」
「へーそうなのね。それじゃあ、」
「ちがっ!?フリじゃ、」
クロンスさんとエリーさんはフリというものを理解してしまったようだ。俺は2人にあっけなく押され、幹へと足を進める。幸い、落ちることはなかった。
俺は手を組み、『無知なる愚者』を発動させる。体はみるみる透明になる。そして、ゆっくり慎重に神獣へと近付く。
神獣は変わらず遠くを見ている。俺は直ぐ側まで辿り着くと、目一杯抱きつく。腕に力を込めて離すまいとした。
「捕獲したよ!」
「良くやったわ!それじゃあ戻って来なさい!」
抵抗されることなく捕獲に成功した俺は、神獣を教師の元へ持っていった。
午後からはまた授業が再開されるらしいが、それはそれとして楽しかった。




