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30.ドタバタ!ハインセ訪問!

 俺はいつも通り学園内の食堂にいた。昼休み、食事を摂るためだ。開けた白いテーブルに俺とクロンスさん、エリーさんが座る。向かい側に座る彼女たちはお盆を置いて、学食を頂こうとしていた。


 「ん…?あれ?」

 俺も昼食を食べようと袋の中を探るが、作ったはずのサンドイッチがない。いくら探してもない。


 「ヤシキ、もしかして昼メシ忘れてきたのかしら?」

 「………うん。そうみたい……。」


 向かいのエリーさんは食べながら聞く。残念ながら彼女の言う通りのようだ。エリーさんの隣のクロンスさんは、良い案が思いついたのか口を開く。


 「よければ私のを食べますか?」

 「干したトカゲは大丈夫かな…。」

 「ふ、普通の食事です!」


 心外そうにクロンスさんは言う。しかし、本当に遠慮しておく。怖いのはそうだが、申し訳ないのもあるからだ。

 さてどうしたものかと考えあぐねていると、おかしな話が耳に入った。


 「おい聞いたか。学校に不審者が侵入したらしいぞ。」

 「不審者って、あのおっさんでしょ?1年の先生の知り合いらしい。見る目ないよねぇ~。」

 「いやいや。それが、あのおっさん腕は確からしいんだ。まっ、呂律は回ってないから頭はどうか知らないけどな。」


 そんなふうに好き勝手言われる人物。不審者とされる人に、俺は思い当たりがあった。先生の知り合いで、腕は確かで、酔っ払いのおじさん。

 それは、もしかするとハインセさんかもしれない。彼は俺を引き取ってくれた人なのだが、ここまでボロクソ言われていると少し胸が痛い。


 「なんかやばいのが来てるらしいわね…。」

 「ですね。…?ヤシキくん、どうかしたんですか?」

 「いや…その不審者って、俺を引き取ってくれた人かも…。俺の昼ごはん届けに来てくれたのかも。」


 俺の言葉に2人は固まる。よもや、お騒がせの不審者が友人の身内とは思うまい。俺も自分でびっくりだ。とにかく、今はハインセさんに会いに行こう。血の繋がりはないといっても、ハインセさんは大切な人だ。


 そう思って立ち上がると、向かいのクロンスさんとエリーさんも立ち上がった。どうやら一緒に来るらしい。


 「お昼ごはんはいいの?」

 「構いません。もう食べ終わりましたから。」

 「早いわね!?言っとくけどアタシはまだよ?」

 「残りは私が食べますよ!」

 「やめなさい!残りは包んで貰って後で食べるわ!」


 エリーさんはクロンスさんの猛攻をくぐり抜けて、残りの食事を食堂の人に包んでもらった。そして、俺達は件の不審者のもとへ向かう。


 取り敢えず職員室あたりにいるかと考えて、向かうと予想は見事に当たった。職員室前には昼休みというのに担任が腰に手を当てて立っていた。その前には見覚えのある男、ハインセさんが包みを持って立っている。


 「おいハインセ。貴様の子供が来たぞ。」

 「お?あー!ヤシキ!オメェ、昼メシ忘れただろ!ほら!」

 

 顔を赤らめながらハインセさんは俺に包みを渡す。どうやら本当にお昼ごはんを届けに来てくれたようだ。近付くと酒の匂いがした。


 「あ、ありがとうございます。………その、ハインセさん。不審者が来たって騒ぎになっていたんですが何かしたんですか?」

 「ん?なんもしてねぇぞ。」

 「嘘をつけ。貴様、窓をよじ登りながらヤシキを探していただろう。他の生徒が怯えていたぞ、全く。」

 

 担任の言葉が本当なら、確かにハインセさんは不審者だ。お昼ごはんを届けてくれたのは嬉しかったが、不審者となっては不味い。


 「オメェはいつも細けぇことばっかりだな!んなこと気にしてたら寿命縮んじまう!」

 「酒ばかり飲む貴様に、寿命がどうと言われたくはないな!」

 「はっ!オメェの方が昔は酒飲みだったろ!」

 「昔のことさ!」


 担任とハインセさんはやいのやいの言い合いを始めた。やけにムキになる担任は何だか新鮮だった。見ていると中々面白かったが、俺達は昼休みの真っ只中なのだ。

 早めに切り上げてお昼ごはんに行こう。


 「ハインセさん、ありがとうございました。俺はこれで…。」

 消え入るようにクロンスさん達とその場を去る。


 「あの人がアンタの親なの?」

 「うーん、血は繋がってないから親代わりかな…。」

 「なんというか元気な方でしたねぇ。」

 「元気ってか、酔っ払いじゃない…。」


 エリーさんの指摘は正しい。悪い人ではないが、慢性的に酔っ払っているハインセさんを思い浮かべて俺は昼食へと向かうのだった。

 

 


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