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25.伝えるということ

 「はぁ。」

 昼休み。俺は学園内の食堂でエリーさん、クロンスさん達と昼食をとっていた。そんな最中、エリーさんはおもむろに溜息をつく。

 何やら憂鬱なことがあるのだろうか。俺は事情を聞いてみる。


 「どうしたの?」

 「やなこと思い出しただけよ。」

 「もしかしてクロンスさんに何か変なの食べさせられたとか?」

 「失礼ですね!私はエリーちゃんにそんなもの食べさせませんよ!」


 そうは言うがクロンスさんの味覚は変わっているので、善意でゲテモノを勧めることが往々にしてある。がしかし、今回はそうではないらしい。エリーさんは首を振って続ける。


 「クロンスちゃんのオススメを食べる方が幾分かましね。アタシの直面する問題と比べたら、何だって食べるわ。」

 「その問題って?」

 「…………婚約者が居るんだけど、アタシには合わないのよ…。」

 「え!?エリーさん婚約者いるんだ!?」

 「ゲレター家は名門ですし。それにしてもエリーちゃんは学生なのに大変ですね…。」


 俺は驚いて目の前のエリーさんを凝視する。同じ学生という立場なのに、家柄が良いと言うだけで悩みのタネはみるみる増えてしまうらしい。同級生として、何より友として、何か力になれるだろうか。

 そう思っていると、クロンスさんが話の続きを促す。


 「婚約者の方と合わないというのは、具体的にどういうことなんですか。もしかして食事の趣味とか…でしょうか。」

 「食べ物のことばっかりね。違うわよ。なんというか、相手はアタシが目立つのを嫌うみたいで。その度嫌味を言ってくるのよ。」

 「言い返さないの?正直、エリーさんならやられたら2倍にして返すようなイメージなんだけど。」

 

 俺にとって、エリーさんは何より勝気で行動派だ。いくら婚約者といえども、嫌なことがあれば『アンタうざいわよ。』ぐらい強くでそうなものだが。

 そんな予想に対して、エリーさんは溜息をつきながら答え合わせをしてくれた。


 「はぁ。やろうとも思ったわ。でもアイツ外面は良いから下手に何かトラブルを起こすと父様や母様にも迷惑がかかりそうなの。」


 成る程。婚約者ということは家同士の関係が重要になる。つまり、迂闊に婚約者との関係を悪化させたくはない、ということなのだろう。それにしても、エリーさんが我慢ばかり強いられているのは友人として喜ばしくない。


 「………アタシ、きっと怖いんだわ。自分の気持ちを伝えるのって、勇気がいるもの。」

 「ですが、私にしっかり伝えてくれましたよね。」

 

 そうだ。クロンスさんの言う通り、エリーさんは自分の意志、即ち友達になりたいということを伝えていた。これは大きな進歩ではないか。この波に乗って、婚約者にだって立ち向かえる気がする。


 「俺に何か手伝えることはある?話し合いの場を設けるとか、仲裁役として一緒に行くとか。」

 「………そう、ね。それじゃあ頼んじゃおうかしら。」

 「うん。任せてよ!友達の頼みだからね。気合入れて婚約者さんとの間に入るよ!」

 「ヤシキくん。それじゃあ間男みたいです。」


 クロンスさんの的確なツッコミを受けつつ、俺達はエリーさんの婚約者と会うことになるのだった。

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