24.お出掛けへ行こう。美味しいスイーツはいかが。
「エリーさん、ペンを見つけてくれてありがとう。」
俺はエリーさんへ感謝した。すると彼女は不思議そうに首を傾げる。
「別に構わないけど、随分そのペン大切にしてるのね。」
「うん。俺を引き取ってくれた人がくれた物だから。」
「…………そう。いいわね、そういうの。アタシ、モノなんてすぐに買い換えればいいと思ってたから。考えを改める必要がありそうだわ。」
そう言うエリーさんを見て、俺はふと考える。これは何か彼女にお礼をする機会なのではと。そしてあわよくば、友人とのお出掛けが出来るチャンスになり得る、と。
「お礼と言っては何だけど、今度何処か行かない?」
「私、美味しいスイーツ知ってますよ!3人で行きましょう!」
クロンスさんが元気に言う。心なしかいつもより3割増で声に張りがある。食事に関する話題を出したからか。そこで、嫌な予感が頭を巡る。クロンスさんの言う美味しいスイーツは本当に美味しいのだろうか。
彼女の味覚を疑っているわけではない。わけではないのだが、日頃から干したトカゲや揚げた蜘蛛を食している彼女の味覚は俺達と離れている可能性が高い。
「クロンスちゃん。本当に美味しいスイーツなのよね…?猿の脳みそなんか出てきたりしないわよね…?」
やはりエリーさんも俺と同じ考えのようだ。
「出てきませんよ!私を何だと思っているんですか!」
「ゲ、ゲテモノ専門の美食家…とか?」
「ヤシキくん、私をそんなふうに思ってたんですね!?薄々気付いていましたけど!そういう事言うならスイーツ紹介しません!」
クロンスさんは拗ねてしまった。善意で言ったであろう彼女に対して、すこし冷たかっただろうか。ここは彼女の機嫌を取り持った方が良さそうだ。
俺はエリーさんとアイコンタクトをとる。
「ごめんなさいクロンスちゃん。アタシ達、偏食だからアンタみたいに色んな食材を食べれないのよ。」
「そうそう!だからこそ、俺達が食べたことないのを教えて欲しいな!」
「…………そういうことでしたら任せてください。ふふっ、仕方ないですね!」
機嫌はすぐに直ったようだ。思いのほかチョロいぞ。自分で言うのもなんだが、俺は君のことゲテモノ専門の美食家って言ったんだぞ。もう少し怒っててもいいんじゃないか。いや、機嫌を直してくれたのは嬉しいけど。
なにはともあれ、俺達はクロンスさんのオススメするスイーツを食べに行くことになった。
「クロンスさん、俺は君を舐めてたみたいだ…!」
来たる休日、俺達はクロンスさんイチオシの店へ来ていた。そこで早速、メニューを選んでスイーツを頂いているのだが、これが驚くほどストレートに美味しい。
「ふふっ。見直しましたか。」
「うん…。君はゲテモノ専門の美食家なんかじゃない。味の伝道師だ!師匠と呼んでも!?」
「勿論構いませんよ!ヤシキくんは弟子1号ですね!エリーちゃんは弟子2号にしてあげます!」
「え、遠慮するわ…。」
エリーさんはつれないことを言う。何と勿体ない。俺達はクロンスさんに弟子入すれば、この世のどんな美味も味わえるというのに。
俺達はクロンスさんオススメのスイーツをひと通り平らげた。普通の食事ではないのに、途轍もない満足感がある。やはり、友人と出掛けるのは良いものだ。
「エリーさん、今日のスイーツ美味しかったね。」
俺はエリーさんに話しかける。そもそも今日は彼女への礼も兼ねて出掛けたのだ。スイーツを勧めたのはクロンスさんとは言え、喜んでもらったら嬉しいのだが。
「えぇ。そうね。とても美味しかったわ。アタシ、食事は家の人間が勝手に作るから特に興味も無かったの。でも、今日みたいに美味しいのがあるなら自分でも探してみようかしら。」
エリーさんは優しくはにかむ。どうやら満足頂けたようだ。
「ありがとうね、師匠ちゃん。それと兄弟子くん。」
「師匠…?急にどうしたんですかエリーちゃん。」
「ア、アンタ達の師弟ごっこに付き合おうと思ったのよ!」
「あぁ。私の一門は今日限りで解散しました。どうしてもと言うなら、エリーちゃんが次なる味の伝道師に…。」
「ならないわよ!もう!」
「俺、弟子1号になるよ。」
「要らないってば!」
そうして俺の友人と過ごす1日は終わりを迎えるのだった。腹と心はこれ以上ないくらいに満たされた、そんな1日だった。




