22.呪いの解析。未知の探求へ!
「よく来たわね!ゆっくりしていきなさい!」
魔法学校の一室でエリーさんは元気よく俺とクロンスさんを迎えた。放課後、俺達はクロンスさんの呪いについて調査する為にエリーさんの手伝いをすることになったのだ。
「それにしても、ここって何も使ってないの?」
部屋を見渡す。整理整頓された本棚や、怪しげな小物が収納された棚等、ここはとにかく物が多い。
「使ってないわ。先生に相談して使わせて貰ってるのよ。」
先生、というのは俺たちのクラスの担任だろう。やや口の悪い男を思い浮かべる。
「何だかんだ面倒見いいよね。」
「ですね。あんな先生が担任で良かったです。」
そうこう話していると、エリーさんは早速本題に入った。クロンスさんの呪いについてだ。
「アタシは今まで呪いについて調査して来たわ。例が少ないから文献とかでね。それで、一つの仮説を立てたの。呪いは掛けられた人間の感情に呼応するんじゃないかってね。」
「それじゃあ、今日はそれを確かめるってわけだね。」
「えぇ、そうよ。ということでクロンスちゃん用意は良いかしら。」
「はい。どこからでもどうぞ。」
構えるクロンスさん。感情についての実験ということは、俺の役目は彼女を笑わせたり怒らせたりすることだろうか。
紙とペンを用意したエリーさんを見ると、彼女は俺が何をすれば良いのか指示を始めた。
「ヤシキくん。まずはクロンスちゃんを怒らせてみて。怒らせるようなことを言えば平気よ。」
「怒らせるか…難しいな…。」
頭を捻る。何だかんだクロンスさんが怒っている様子を想像できない。どうすれば彼女は怒るのだろうか。
「………クロンスさん。」
「はい。どうかしましたか。」
「君の隠した干しトカゲは全部俺が食べたよ。」
「そ、そうですか。まぁ構いませんよ。友人ですし。」
「素揚げ蜘蛛も食べたよ。」
「お、美味しかったのなら良かったです。」
「いや。全く美味しくなかった。すごい不味かったよ。」
「………………………。」
クロンスさんの眉が寄る。これは、怒っているのかもしれない。というか、実験のためとは言え彼女の硬い表情は心臓に悪い。
「いいわね!良い感じにムスッとしてるわ!」
それは良いことなのかな。いや、そういう実験だから良いんだろうけどあんまりエリーさんが生き生きしてるから、逆に気が引けてきた。
「うーん、変化は無さそうね。次は笑わせて!」
「お、オーケー。」
次のお題は笑わせる。笑うといっても種類があるだろう。微笑か爆笑か苦笑か。そのどれもが笑みだが、意味合いは全くの別物だ。
俺はエリーさんを見るが、彼女は紙に目を通した後俺と目を合わせて一言。
「笑顔なら何でも大丈夫よ!」
そっか。どちらにせよ難しい気がするが。少しの思案の後、俺はある話をすることにした。
「俺、この間の補習で先生と2人きりだったんだ。そこで、先生が言ったんだ。『私のテストで15点という最低点を叩き出したのは貴様が初めてだ。私は今、未知の存在と対面している。』って。」
「…………わ、私はヤシキくんがどれ程未知な存在でも友人であろうと、思います。」
ぎごちない笑顔と共に、クロンスさんのフォローが入った。あまりの酷さに励ましの言葉を受け取ることになった。
「うん!いい笑顔ね!良い感じに不自然な笑顔よ!」
「それでいいの…?」
「えぇ。感情の発露が確認できれば良いもの!………でも、感情と呪いはあまり関係ないみたいね。」
それじゃあ俺はただただ、恥ずかしい話をしただけじゃないか。クロンスさんは話を終えたというのに、憐れんだ表情で俺を見る。
「大丈夫よヤシキくん。アタシも、アンタが未知の存在って言われるぐらいの知能でも友達でいるわ!」
「友達ならもうその話やめようよ!」
クロンスさん、そしてエリーさんに気を使われて、特に収穫もないまま呪いの実験は終わるのだった。




