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18.神託騒動④

 エリーさんと話をした翌朝、俺はクロンスさんと他愛もない日常会話をしていた。エリーさんのことについては俺から言うつもりは無かった。

 本当は彼女はクロンスさんを嫌っていないと言うだけなら容易だ。しかし、それを伝えて向き合うのはエリーさん本人の方が良いだろう。そう思って、俺はいつも通りの生活を送る。


 今日もまた神託の力について授業があった。実際に使ってみることもあるので、敷地内の森で行っている。

 それが終わると昼休みになった。生徒は昼食のために森から校舎へと戻ろうとしていた。勿論、俺とクロンスさんもだ。


 しかし、俺達に声を掛ける人が居た。

 

 「クロンスちゃん。アタシ、神託の力を使って試したいことがあるのよね。昔のよしみでちょっと付き合ってくれないかしら。」

 

 エリーさんはそう言ってクロンスさんの腕をひく。


 「分かりました。ヤシキさん、先に行ってて大丈夫です。」

 「いや、俺も残るよ。いいかなエリーさん?」

 「…………別にいいわよ。」


 彼女の同意を得て、俺は2人を見守ることにした。

 エリーさんはきっと確かめるつもりなのだ。本当にクロンスさんは強くなったのか、本当に呪いのせいで傷付くことはないのか。


 「アンタの神託の力なんか、アタシに敵いっこないこと教えてあげるわ。」


 そう言って彼女は手を組んだ。神託の力を使うつもりなんだ。俺はエリーさんの力がどんなものかおおよそ把握しているが、クロンスさんに伝えるつもりはない。

 正々堂々の勝負ではなくなるからだ。


 「きゃっ!?」


 変化はすぐに起きた。エリーさんの神託の力によってクロンスさんは転んだ。起き上がろうとするが、それは叶いそうもない。

 恐らく、俺の時と同じように見えない何かで足を掴んでいるのだろう。


 「『穢れた忌み子』を使ってみなさいよ!どうせそんな力じゃなんにもならないもの!」


 挑発的にエリーさんは言う。もしかすると彼女はクロンスさんが強くあってほしいのかもしれない。そうすれば、呪いの力なんかに負けないから。

 

 クロンスさんは彼女の言葉通り、手を組む。そして捕らえられた足に触れた。

 途端にクロンスさんの足は変色してしまう。目を逸らしたくなるほど紫色になる。だが俺は目を逸らさない。見届けなくてはならない。クロンスさんが決して弱くはないということを。


 「っ!?な、何よ、それ。」

 「これが私の力です。……触れた部分を壊死させる事が出来るようですね。」

 「ア、アンタ馬鹿なの!?何でそんなの簡単に使うのよ!」

 「エリーさんに付き合おうと思ったので。」


 そう言いながら、ふらふらとクロンスさんは立ち上がる。


 「続けましょうエリーさん。攻撃しても構いませんよ。私も、神託の力で応戦しますから。」

 「……………。」


 状況は圧倒的にクロンスさんが不利だ。見えないエリーさんの攻撃に対応しきれていない。このままいけば、クロンスさんは自滅するだろう。

 それでも、きっと神託の力を使うことはやめないはず。そう思わせるほど強い瞳がそこにはあった。


 「…………。やめよ。こんなの、やめにするわ。」

 「?いいのですか?」

 「えぇ。それよりも早く手当てに行きなさいよ。ヤシキくん、連れて行けるわよね。」

 「うん。」

 

 エリーさんの言葉につられて、俺はクロンスさんに駆け寄る。近くで見ると、この足でよく立っていられたと感じる。


 「………クロンスちゃん、ヤシキくん。突っかかって来て悪かったわね。もう絡みに行かないわ。」


 彼女はそう言ってその場を立ち去るのだった。

 

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