15.神託騒動
神託が下ってから教室は騒がしかった。誰がどんなことを言われたのか、どんな力を受け取ったのか、話題はそれで持ちきりだ。
俺は変わらず隣にいるクロンスさんと話をしていた。
「うーん神託の力って何でもありならお酒を消すやつとかないのかなぁ。」
「随分ピンポイントですね。何かあったんですか。」
「それがね俺を引き取ってくれた人がいつも酒ばっかり飲んでてね。あれじゃあ早死にしちゃうよ。」
「成る程…。ヤシキくんの『無知なる愚者』でお酒を透明にしたりはできないんですか?」
「試したこと無かった!今日やってみるよ!」
もし成功すればシラフのハインセさんと出会えるかもしれない。そんなことを考えながらクロンスさんと会話を続ける。
すると、急に一人の女子生徒が間に入って来た。
「聞いたわよ。クロンスちゃん。アンタの神託『穢れた忌み子』って言うのよね?アハッ。呪われてるくせに神託なんて貰おうとするから、神様がお情けでくれたのねぇ。」
「確かエリーさんだよね。君もクロンスさんと友達になりたいの?」
「はぁ?」
「だって、わざわざ話に来たんだもん。違う?」
「…………ハッ。まさか。クラスの変人しか相手にしないクロンスちゃんと何でアタシがお友達になるの?大した妄想力ね。」
クラスメイトのエリーさんは手をひらひらとさせて、俺達から離れていった。それにしても、なんだか嫌な言い方をするものだ。
神への信仰が強いといっても、神託にあれ程拘らなくたっていいだろうに。
「………エリーちゃんは素直じゃないだけですから。平気ですよ。」
「あの人と仲いいの?」
「いえ。昔は良かったんですけどね。」
昔は良かったが今は違う。それは単純に時の流れで離れていったのか、はたまた呪いの影響で離されたのか。俺には定かではなかった。
しかし、無駄な心配はしない。それは彼女にとって失礼だからだ。
「それでは失礼します。」
俺は職員室を出ようとする。提出物を出すために担任の元を訪れていたのだ。立ち去ろうとする俺へ担任は声をかける。
「そうだエリー・ゲレターを呼んできてくれ。」
「…………エリーさんですね。分かりました。」
「何だ嫌なのか。」
「い、いえ。ただ少し苦手なだけです。」
「そうか…。神託が下ってから荒れているからな。やはり私が直接行こう。」
「いえ、俺が行きます。クラスメイトですし。」
そうして俺は教室へ行った。エリーさんが何処にいるのかは知らないがまずは教室を覗いてみよう。
幸運にもエリーさんは教室にいた。放課後ということもあって彼女一人だけだ。
「エリーさん。先生が呼んでいたよ。」
「…………全く。やっとこの間のを確認してくれたのかしら。」
愚痴を言いながらエリーさんは立ち上がる。そして教室を出ていく直前、俺の方へ振り向いて話しかけてきた。
「ねぇヤシキくん。アンタ、どうしてクロンスちゃんと一緒にいるの?やっぱり可哀想だから?」
「違うよ。そんなふうに思うのはクロンスさんへの侮辱だよ。」
「…………ハッ。よく言う。あぁ、分かったわ。優越感に浸りたいのね。自分にだけ心を開いてくれる存在を使って満足したいのよ。」
「クロンスさんは物じゃないよ。俺の友人だ。」
「…………………。」
俺の言葉が気に触ったのか、エリーさんは俺を睨みつける。そしてすぐに背を向けて教室を出ていってしまった。
彼女は本当にクロンスさんが嫌いなのだろうか。やけに突っかかってくる。だが何れにしてもクロンスさんなら平気だろう。俺はそう思って町にある家へ帰るのだった。




