11.町への引っ越し。業者じゃなくて自分達でするんですね!
「ヒック。ヤシキ、物はまとめたか!」
「はい。終わりました!」
相変わらず酔っ払っているハインセさんに返答する。今日は森の奥の家から町へと引っ越す日だ。
俺は元々荷物もないのですぐに荷造りは終わったが、ハインセさんの物が如何せん多く時間がかかってしまった。どうやら彼はあまり物を捨てないようだ。
「そう言えばこんな写真を見つけたんですけど、」
手にしたのはハインセさんと俺の担任らしき人物が写っている写真だ。2人して顔を赤らめて酔っ払っている。
「あ?あー、昔の写真だな。なんだ、なんかおかしいのか?」
「いえ。ただ、2人は仲良しなんですね。ハインセさんは兎も角、先生がこんなに酔っ払うなんて想像つきません。」
「馬鹿、オメェなアイツは俺よりも酒癖がわりぃぞ。だってのに、昔はよくアホみてぇに飲んでたから手がつけられなかったんだ。」
「へぇ。」
俺の担任との思い出について語っているハインセさんは何処か楽しそうだった。真の友人というのはそういうものなのかもしれない。羨ましいな。
俺もいつか2人のように信頼し合える友人を作れるようになりたいものだ。
「ヒック。昔話はここらへんで良いだろ。ほら、新居に行くぞ。」
「はい。あれ?でも家具はどうするんですか。」
「あ?俺が運ぶんだよ。まずはオメェを連れてくからあとから来た荷物を整理しろ。」
「わ、分かりました。」
家具を運ぶなんて言うが荷台があるわけでもない。それに、町までは森を抜けなければならない。
けれどハインセさんなら家具を担いでビュンビュン飛び回るのもおかしくはない。それぐらい身体能力があると思う。
そんな俺の予想は見事的中しており、ハインセさんは何往復もしながらあっという間に家具を運び終えた。生身の体で行ったのだ。さすがだ。
「うぅ…うげ…。」
「わぁ、ハインセさん!?」
作業を終えたハインセさんは床に座り込んだかと思うと、ピカピカの床に吐瀉物をまき散らかした。やっぱりお酒を少し控えたほうがいいと思う。
俺は急いで片付けをする。
「ワリィなヤシキ。」
「いえ。でも、お酒の量は減らしたほうが良いですよ。」
「ヒック。何だオメェ、俺を酔っ払いみたいに…。」
「みたい、というか酔っ払いそのものですよ!」
本人は酔っている自覚がなかったらしい。それはそれで恐ろしいが。
長生きしてもらうためにも、ハインセさんのお酒については要注意する必要があるようだ。




