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103.とくべつ

 風がやむ。目前にいるニィナさんは教会の外に残った俺を見て顔を歪める。


 「ヤシキ…だっけ?お前が相手ってわけ?」

 「そうみたいだね。勿論、負けるつもりはないけど。」


 相手を警戒しつつ答える。いつ、またあの豪風がやって来るか分からないのだ。俺は腰にくくりつけた杖と球形遊戯(ラウンダン)用のボールへ意識を向ける。武器と言える武器はこれくらいだ。球形遊戯(ラウンダン)用のボールは付属の杖を使えば遠隔で操作できる。その仕組みを使えば、ニィナさんが起こす風の中でも戦えるかもしれない。

 策を練る時間を稼ぐため、口を開く。


 「………君は本当に俺と戦うの?」

 「はぁ?なんでそんなこと聞くわけ?」


 俺の問いに答えず、ニィナさんは不機嫌そうになる。相手のペースを崩すことを念頭に、更なる言葉を紡ぐ。


 「だって、俺の知る限りじゃ君は2回勝負に負けてる。オッヘルくんとリザベラ先輩に。なのに、どうしてまだ戦おうとするの。」

 「……………お前、勘違いしてんじゃない。」

 「勘違い?」


 地を這うような低い声のまま、少女は俺を睨みつける。あまりの迫力に気圧されそうになる。どうやら今の発言は彼女にとってよほど気に食わなかったらしい。


 「確かにうちはあいつらに負けたよ。でもさぁ、お前がうちに勝てるって発想はどこからきたわけ?」

 

 ニィナさんは眉間に皺をよせ、手を組む。神託の力を発動させるつもりだ。俺は咄嗟に付近の木へ手を伸ばす。


 「言っとくけどね、お前はうちに勝てっこないよ。だって、うちは『とくべつ』でお前はほかの人間みたいな有象無象なんだから!」

 

 彼女の叫びと同時に再び豪風が吹き荒れる。飛ばされまいと木に掴まるが、やはりこの風の対処法は思いつかない。必死に頭を回す中、風に影響されていないニィナさんは俺へと近付く。恐らくリザベラ先輩と対峙したときのように掴まる手を足蹴りするつもりだ。

 そんな俺の考えは浅はかだったと、ニィナさんを見て思い知る。彼女は懐から小指よりも細い針を取り出したのだ。それを、風の向くまま離す。何が起きるか、分かりきっていた。


 俺を吹き飛ばさんとする風は、まんまとニィナさんが飛ばした数本の針を此方へ届ける。勢いよく。

 細いと言えども、針は針。それらは俺の体や額を掠める。中には足にうまく刺さってしまうものさえあった。思わぬ痛みに声を漏らす。


 「っ!」

 「はっ!近付くと思ったわけ!?うちは馬鹿じゃないからさ!此処からゆっくりお前をいたぶるよ!」


 確かに、彼女の言う通り舐めていたのかもしれない。以前、リザベラ先輩へ近付いて敗北したのなら、距離を置くのは当然だ。

 しかし、納得なんてしている場合ではない。どうにかこの状況を打開しなければ。絶え間なく続く風と運ばれる針に耐えながら、頭を回す。

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