100.ハチャメチャメチャクチャ
突風に飛ばされるまま、クロンスが到達したのは校舎の屋上だった。随分、飛ばされてしまったものだ。体を起こしながら、周囲を見る。すると、何の因果か目前にいるのは気に食わないと感じていた相手、オッヘル・オリヴァだった。
「おや……。偶然にしては出来すぎているね…。いや、だがニィナくんにはそんな意思はないか…。」
オッヘルもクロンスに気付いたらしく、ひとりでに呟く。神のため、すぐさま屋上を去るかと思われたが、そうはいかなかった。彼は立ち上がり、クロンスへ声を掛ける。
「さて、折角だ。君を倒してから神の元へ向かうとしよう。」
堂々とした宣言。またしても、クロンスはオッヘルに腹が立った。今の発言はまるで、自身の勝利を疑ってはいないかのようだ。よほど自信があるのか、それともクロンスの実力を軽んじているのか。どちらにせよ、彼女の気に触れることには変わりない。
売り言葉に買い言葉。クロンスは鼻を鳴らして答える。
「そうですか。なら、私も貴方を倒してヤシキくん達の元へ行くとします!」
言葉と同時にクロンスは手を組む。そして、地面へ触れる。瞬間、屋上の床が崩れた。彼女は自身が下の床に打ち付けられないために、屋上の柵を神託の力で崩す。両端をぽろぽろと塵にすることで、柵が外れる。
柵の先を手にして壁に這わせ、そこに重心をかける。こうすることで落下のスピードを落とし、衝撃を緩和させるのだ。
無事、クロンスは屋上したの教室へ着地する。砂煙の中、目を凝らす。ろくな対策をせずに落下したオッヘルは、体を床に打ち付けたことだろう。であれば、ダメージは期待できるはず。
そう思った矢先、炎が上がる。それと共に、燃え盛る中心地から風を感じた。
「ヤシキくん達…。はぁ。君は本当に、自分がないね。」
溜息をつき、炎の中から現れたのはオッヘルだった。燃え盛る中で生じた風が、僅かに彼のクッションとなったようだ。
「全く…。校舎も傷付けて…。」
服を払いながら溜息をつく。その態度がより一層、クロンスを苛立たせた。目前の男の、何もかにもが気に食わない。気取った調子も、ヤシキやエリーと勝手に親しくしたことも、全て。
そんな苛立ちと同時に、頭の片隅が急速に冷えていくのを感じた。オッヘルの言葉を思い出してのことだ。
『君は友人に寄りかかりすぎている。』
言葉が脳内に響く。その度に、沸き上がる怒りをおさめなければと理性が働く。相反する心の内が、彼女の判断と体を鈍らせる。
「何もしないのかい?それなら僕からいこう!」
「っ!」
声と共にオッヘルが手を組み、炎の玉を飛ばす。反応が遅れたクロンスは咄嗟に身をよじるが、惜しくも炎が肩を掠める。
焦げた匂いが鼻をさす。焼けた痛みと絡まった思考に足を引っ張られながら、クロンスは歯噛みする。何とか、勝利する方法を考えなければ。




