1.トラックに轢かれました。酒気帯び運転には気をつけよう!
「あのさ、空気よんでくれる?」
そう言って母は休日だと言うのに俺を団地から追い出した。彼女にとって俺は邪魔らしい。いや、仕方ないか。
今、俺と母の住む一室にはもう一人男がいるのだ。見知らぬ人間ではない。母の新しい男だ。真っ昼間から盛るのか知らないが俺は邪魔だということで、炎天下の中追い出されてしまった。
「うーん、暑いし図書館にでも籠もるか。」
といっても、俺の住む団地から図書館までは自転車で1時間ほどかかる。まぁでも、矯声を上げる母なんて見たくないし、日が暮れるまでは大人しく外にいよう。
そう思って籠の曲がった自転車に乗り込む。
真夏の日差しの中、ペダルを漕ぐ。にしても暑いな。額に汗が滲むのを感じていると人の悲鳴が耳に入った。
「きゃぁっ!」
「おいそこのトラック!今すぐ止まれ!」
「大丈夫。すぐに救急車呼ぶから。」
声を聞きながら急斜面を登り、角を曲がる。するとそこには巨大なトラックが。止まってはいない。ガンガン動いているし、何ならこっちに向かっている。
あ、これ避けられないやつだ。
はんば諦めながら、俺が最期に目にしたのは顔を赤くしたトラックのおじさんだった。