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第二章:霧幻の古城

全12章(くらい)、約10万字程度で完結する予定のお話になります。

ぜひ第一章からご覧ください!

最後まで飽きない内容になるようがんばりますので応援お願いします☺


物語の完結までは毎日更新を目標にしています…!

移動時間などの暇つぶしにご活用ください✨️

犬山恭子という強力(そうな)味方を得て、和真の異世界生活はひとまず「元の世界に帰る」という明確な目標を得た。とはいえ問題は山積みだ。12個の天守核を集める――その途方もない目標の次の一歩をどこへ向けるべきか。


「ねえキョウコさん。他の天守の人たちがどこにいるか心当たりはあるの?」


森を抜け、比較的開けた街道のような場所を歩きながら和真は尋ねた。恭子は自分の天守核を持っているとはいえ、他の11人の居場所を全て把握しているわけではないだろう。


「んー、大体の方角とか、どんな場所にいるかっていうのは言い伝えとかでなんとなくはね。でも、詳しい場所までは分からない人も多いかな。天守って、あんまり他の天守と積極的に交流するタイプじゃない人も多いから」


恭子は顎に手を当てて考え込む。


「それに 『天守核の力で居場所を探る』なんてこともできないんだ。核の力はそれぞれの天守とその土地に強く結びついてるから、遠く離れると干渉しにくいし。そもそもお互いの力を探り合うのは喧嘩売ってるようなものだからね」


なるほど、GPSのように簡単に探せるわけではないらしい。


「じゃあどうする? 手当たり次第に探すしかない?」


「まぁそういうことになるけど…。でも、いくつか情報はあってね」


恭子は人差し指を立てた。


「比較的近くにもう一人、天守がいるはずなんだ。北の方角にある『かすみの城』って呼ばれてる古いお城に」


「霞の城…?」


「うん。丸岡城っていうんだけど、いつも霧がかってるからそう呼ばれてる。そこの天守は丸岡まるおか かすみさん。かなり古くからいる天守だって話だよ」


「古い…」


和真の脳裏に写真集で見た丸岡城の姿がぼんやりと浮かんだ。現存天守の中でも特に古い様式を持つ、渋い佇まいの城だ。


「古いってことは何か知ってるかもしれないな。天守核の伝説のこととか」


「そうかも! それに、古い天守ほど力の扱いにも慣れてるはず。手強いかもしれないけど、会ってみる価値はあると思う!」


恭子の提案に異論はなかった。まずは情報を集める意味でも、その「霞の城」を目指すことに決めた。


数日間の旅だった。街道を歩き、時には獣道を進み、夜は洞窟や大樹の陰で野宿をする。幸い、恭子はこの世界の動植物や地理にある程度詳しく、食料となる木の実や薬草の見分け方・安全な野営地の選び方などを教えてくれた。


和真もスキル【解析】で有毒な植物を見分けたり【構築】で簡易な雨避けや寝床を作ったりと、二人の知識とスキルを合わせることで思ったよりも快適な旅が続けられた。


道中、小さな村に立ち寄ることもあった。テンシュリアの人々は和真のような見慣れない服装の人間にも比較的寛容だった。もちろんジロジロと見られることはあったが、敵意を向けられることは少ない。恭子が間に入ってうまく説明してくれたおかげもあるだろう。


村の酒場のような場所で、和真たちは丸岡城や霞についての噂をそれとなく聞いてみた。


「ああ、霞の城ねぇ。あそこは近寄らん方がええよ。特に霧の深い日はな」


「なんでも、城に近づく者は霞様に化かされて二度と戻ってこれんとか…」


「霞様は古い古い天守様じゃ。気難しくて、滅多に人前に姿を見せんらしい」


あまり良い噂は聞かれなかったが、同時に人々が「霞」という存在を畏敬の念を持って見ていることも伝わってきた。


「やっぱり、簡単には会えなさそうだね」


「まあ、天守なんて大体そんなもんよ」


恭子はどこか楽しげに言った。


「でも、だからこそ燃えるじゃない!」


その前向きさというか、無鉄砲さというか…和真は苦笑するしかなかった。


そしてついに目的地の麓に辿り着いた。噂に違わず、城が建つ小高い丘の周辺はまるで白いベールを被ったかのように深い霧に包まれていた。視界は数メートル先も怪しいほどだ。


「うわ…本当に霧がすごいな」


「でしょ? これが霞の城の所以だよ。さ、行こっか!」


恭子は躊躇なく霧の中へと足を踏み入れる。和真も慌てて後に続いた。


霧の中は方向感覚が狂いやすかった。少し進むと自分がどちらを向いているのか、どれだけ進んだのかさえ曖昧になる。おまけに道がいくつにも分かれているように見えたり、同じ場所をぐるぐると回っているような感覚に陥ったりした。


「…キョウコさん、これって…」


「うん、たぶん霞さんの力の一部だね。幻術…ってほど強力じゃないけど、方向感覚を惑わすくらいのことはしてるみたい」


恭子は冷静に分析する。彼女も天守だけあって、こういう力には多少なりとも耐性があるのかもしれない。


「俺のスキルで正しい道を探せないかな」


和真は意識を集中し【解析】を発動させた。視界に淡い光の線が浮かび上がる。


『対象:周辺空間(霧、微弱な魔力干渉を確認)』

『空間歪曲:軽微(方向感覚誤認誘発)』

『正規ルート:北北東へ約300m、その後、石段を登る』

『注意:足元に不安定な箇所、隠された罠の可能性あり』


「よし…こっちだ」


和真は【解析】が示した方向を指差す。スキルは霧による視界不良だけでなく、微弱な魔力による空間の歪みのようなものまで感知しているようだった。二人は和真のナビゲーションを頼りに慎重に霧の中を進んでいく。


何度か足元のぬかるみに嵌りそうになったり、突然現れた木の根に躓きそうになったりしたが【解析】の事前警告と恭子の素早い反応で事なきを得た。やがて、霧の中にぼんやりと石段が見えてきた。


「あった…!」


「これを登れば、お城に着くはずだよ」


石段は苔むしており、長い年月を感じさせた。一段一段、踏みしめるように登っていく。霧は依然として濃いが、確実に城に近づいているという感覚があった。


石段を登り切ると少しだけ開けた場所に出た。目の前には、霧の中にうっすらと古風な櫓門やぐらもんが見える。その門は固く閉ざされていた。


「どうする? 門を破るわけにもいかないし…」


「うーん、とりあえず、声をかけてみる?」


恭子が門に向かって声を張り上げようとした、その時だった。


「……何の用ですかな?」


凛とした、それでいてどこか捉えどころのない声がすぐ近くから聞こえた。驚いて声のした方を見ると、いつの間にか一人の女性が立っていた。


灰色の、古い時代の着物のようなものを纏って長い黒髪を一つに束ねている。年の頃は…二十代後半にも、あるいはもっと上にも見える。透き通りそうな白い肌と、感情の読めない静かな瞳が印象的だった。霧と同じ色の霞のような雰囲気を纏った女性。間違いなくこの城の主・丸岡 霞だろう。


「あなたが丸岡 霞さん…ですか?」和真が尋ねる。


「いかにも。この丸岡城の天守、霞と申します」女性は静かに頷いた。


「して、異邦の若者と犬山の娘。あなた方がこの霧を抜け、わたくしの城に何の用向きで?」


霞の視線は和真と恭子を射抜くように見据えている。特に和真に対しては、探るような色が濃い。


「俺は相良和真。こっちは犬山恭子さん。俺たちは…」和真は意を決して言った。


「天守核を集めています。あなたの天守核を、譲ってはいただけないでしょうか」


「ほう…天守核を」


霞の表情は変わらない。だがその瞳の奥に、一瞬だけ鋭い光が宿ったのを和真は見逃さなかった。


「おやおや、随分と物騒なことをおっしゃる。わたくしたち天守にとって核がどれほど大切なものか、犬山の娘なら分かっているでしょうに」


「分かってます!」恭子は一歩前に出た。


「でも、私たちには、どうしても叶えたい願いがあるんです! そのためには12の天守核が必要なんです!」


「願い、ねぇ…」霞はふっと息を漏らした。


「核の力を借りてまで叶えたい願いとは、一体どのようなものですかな?」


霞の問いに恭子は言葉を詰まらせた。和真も「元の世界に帰りたい」とは言えるはずがない。


「それは…言えません。でも、決して悪いことのために使うつもりはありません」和真が答える。


「ほう。ではその覚悟と力を、わたくしに見せていただけますかな?」


霞の目がすっと細められる。周囲の霧が、まるで生き物のように濃度を増していくのを感じた。


「ただで核をお譲りするわけにはいきません。あなた方に、それを持つだけの資格があるのかどうか…このわたくしが試させてもらいましょう」


霞が最初に課してきたのは「試練」だった。


「この城は古いですからな。あちこちに先人たちの知恵やら、あるいは嘆きやらが込められております。まずはこの城の『声』を聞き、わたくしが出す謎を解いてごらんなさい」


案内されたのは天守閣の内部だった。外観も古かったが、内部はさらに時代がかっていた。太い柱、急な階段、そして狭間さまと呼ばれる壁に開けられた小さな窓。


最初の謎は望楼(遠くを見渡せるように高く建てられたやぐら)の柱に刻まれた古い文字に関するものだった。テンシュリアの古い言語で書かれているらしく、恭子にも一部しか読めない。


「えーっと、『満ちては欠ける月の夜、影踏む乙女は何を乞う…?』うーん、わかんないや」


恭子が早々に匙を投げる。和真は【解析】スキルを使ってみた。


『対象:古文書(柱刻)』

『言語:古代テンシュリア語(一部欠損)』

『解析結果:「満月ノ夜、城ノ礎トナリシ乙女ノ魂ハ、ソノ身ヲ捧ゲシ故郷ノ安寧ヲ乞イ続ケル」』

『補足情報:丸岡城「人柱お静」伝説との関連性を示唆』


「人柱…?」和真は眉をひそめた。


写真集で読んだ記憶がある。丸岡城の築城が難航した際、「お静」という片目の見えない女性が我が子を侍にすることを条件に人柱となった。お静を人柱にすることで天守は無事完成したが、約束だった息子の仕官が反故にされたためお静の怨霊が毎年堀に水を溢れさせた、という伝説だ。


「…答えは『故郷の安寧』ですか?」和真が答える。


「…ほう。よく分かりましたな」霞は少しだけ目を見開いた。「では、次の謎は…」


その後も霞は城の構造や歴史に関する謎を次々と出してきた。石瓦の枚数、隠し通路の場所、特定の時代の城主の名前…。恭子はほとんどお手上げ状態だったが、和真は【解析】スキルによる情報の読み取りと現代で得た城郭に関する知識(構造力学的な視点や、歴史的変遷の知識)を総動員して、なんとか全ての謎を解き明かしていった。


「…見事ですな。異邦の若者、あなたには確かに常人ならざる知識と洞察力があるようだ」


全ての謎を解き終えた和真に、霞は静かに言った。


「ですが、知識だけでは足りませぬ。天守核を持つということは力を持つということ。その力を振るう覚悟、そしてわたくし自身を超えるだけの力が、あなた方にはおありかな?」


霞の纏う雰囲気が変わる。周囲の霧が先ほどよりもさらに濃く、重く、そして冷たくなっていくのを感じた。天守閣の最上階・狭い望楼の中だったが、いつの間にか壁も床も天井も全てが濃い霧に覆われ、自分たちがどこに立っているのかさえ分からなくなっていた。


「さあ始めましょうか。わたくしの『霞』、破れるものなら破ってみなさい」


戦闘は視界がほぼゼロの状態から始まった。


「カズマ、どこ!?」


「ここだ! キョウコさん、離れないで!」


和真は叫びながら、咄嗟に恭子の手を掴む。濃霧の中では音も方向感覚も当てにならない。頼りになるのは【解析】スキルだけだ。


『警告:高エネルギー反応接近! 右後方!』


「キョウコさん、右後ろ!」


「きゃっ!」


和真の警告とほぼ同時に鋭い風切り音が響き、恭子が立っていた場所に何かが叩きつけられる鈍い音がした。恭子は和真に引っ張られて辛うじてそれを回避した。


「今のは…!?」


「霞さんの攻撃だ! 見えないけど、何かを飛ばしてきてる!」


霞自身は霧に完全に紛れており姿が見えない。おまけに攻撃もどこから飛んでくるか予測が難しい。


「これじゃジリ貧だ! 何か霧を晴らす方法は…!」


和真は【構築】スキルを発動させる。周囲の素材…いや、この霧の中では素材も何も見えない。


(待てよ? 霧は水蒸気だ。なら、風を起こせば…!)


『提案:簡易送風装置の構築。素材:床板の一部(強度 低)、壁の木材(強度 中)、自身の衣服(帆として利用)』

『注意:限定的な効果。持続時間は短い』


【構築】スキルは周囲の僅かな素材(この望楼を構成する木材など)を利用した装置の設計図を示した。


「カズマ!私、多少の防御能力で少しなら時間稼げるから!何か策がわかったんでしょう!?」


和真は恭子の言葉を信じて構築に集中した。スキルで示された床板や壁の一部を剥ぎ取り、パーカーを帆のように使って即席のうちわのような、あるいは風車のようなものを突貫で作り上げた。


「キョウコさん、少し離れて!」


和真はそれを力一杯振り回す。ぶおん、と鈍い音を立てて風が起こり、一瞬だけ周囲の霧が薄れた。


「そこかっ!」


霧が晴れた先に一瞬だけ霞の姿が見えた。和真はその姿に向かって拾っておいた木片を投げつけるが、霞はひらりと身をかわす。同時に霞の手元から再び何かが投げつけられた。今度は見えた。黒く硬質な…瓦だ。丸岡城の特徴である石瓦。


「石瓦か!」


瓦は高速で回転しながら、和真と恭子に襲いかかる。


「させない!」


恭子が前に出て印を結ぶ。彼女の足元から淡い光が放たれ、障壁のようなものが展開された。犬山城の防御能力だ。石瓦は障壁に当たって火花を散らし、弾き返された。


「ナイス、キョウコさん!」


「でも長くは持たないよ! それにまた霧が…!」


和真が起こした風の効果は一時的なもので、再び濃い霧が立ち込めてくる。


「くそっ、これじゃ埒が明かない…! 何か本体の位置を特定する方法は…」


和真は再び【解析】に意識を集中する。霧そのものではなく、霧を発生させているであろう霞自身のエネルギーを探る。


『対象:空間内魔力分布』

『解析結果:魔力源特定。座標 XXX, YYY(北西隅、低位置)』

『注意:魔力源は移動の可能性あり。幻影による撹乱も確認』


「北西の隅、低い位置…でも、幻影?」


【解析】によれば、霞は本体の位置を眩ますために魔力で作った幻影も複数展開しているらしい。


「キョウコさん、幻影に惑わされないで! 本体は北西の隅だ!」


「わ、分かった!」


二人はお互いを励ますように声を掛け合いながら、霞の本体がいるであろう方向へ慎重に近づく。途中何度も幻影の霞が襲いかかってきたり、霧の中から石瓦が飛んできたりしたが、和真の【解析】による警告と恭子の防御を頼りに少しずつ距離を詰めていく。


「…そこ!」


ついに霧の中に佇む霞の本体を捉えた。霞は少し驚いたように目を見開いている。


「わたくしの霞を破るとは…ですが!」


霞が両手を広げると周囲の霧が渦を巻き、無数の石瓦が宙に浮かび上がった。それらが一斉に和真たちに襲いかかってくる。


「最大防御!」


恭子が叫び、渾身の力で障壁を展開する。ガガガガッ!と激しい音が響き渡り、障壁に次々とひびが入っていく。


「キョウコさん!」

「まだ、いける!」


恭子が必死に耐えている間に和真は最後の賭けに出た。


(あの石瓦…硬いけど、一点に衝撃を集中させれば…!)


【構築】スキルを発動し、手元に残っていた硬い木片を先端が鋭く尖った杭のような形状に変化させる。そして【解析】で霞自身の防御が最も薄いであろう箇所(攻撃に集中しているためか、足元ががら空きに見えた)を特定する。


「これで終わりだっ!!」


和真は恭子の障壁が砕け散る寸前、霞の足元めがけて渾身の力で木の杭を突き出した。


霞は迫る杭に気づき咄嗟に身をかわそうとしたが、完全には避けきれなかった。木の杭は霞の着物の裾を掠め、床板に深く突き刺さる。


瞬間、渦巻いていた霧が急速に晴れていき、降り注いでいた石瓦も力を失って床に落ちた。望楼の中に静寂が戻る。


霞は自身の足元に突き刺さった杭を静かに見つめていた。そしてゆっくりと顔を上げ、和真と恭子を見た。その表情はやはり読み取れない。


「…お見事。わたくしの負け、ですかな」


霞は静かに敗北を認めた。


「まさか、わたくしの霞が破られる日が来ようとは思いませんでしたな」


霧の晴れた望楼で霞はため息をついた。その表情には悔しさよりも、どこか解放されたような、あるいは感心したような色が浮かんでいた。


「あなた方の連携…そして異邦の若者の奇妙な力。確かに、天守核を託すに値するかもしれません」


霞は懐から、恭子のものとは少し色合いの違う、灰色がかった宝珠を取り出した。丸岡城の天守核だ。


「ただし、一つだけ忠告しておきましょう」


霞は天守核を和真に差し出しながら静かに言った。


「12の天守核を集めれば願いが叶う…その伝説、どこまでが真実か、わたくしにも分かりませぬ。ですが、強大な力には必ず相応の代償や予期せぬ結果が伴うもの。あなた方が求める『願い』が本当に望む形で叶うとは限りませんぞ」


その言葉は、まるで未来を知っているかのように重く響いた。


「…覚悟の上です」和真は霞の忠告を胸に刻みながらしっかりと答えた。


「俺たちは、それでも進みます」


「そうですか…」霞はふっと微笑んだように見えた。


「ならば止めはしませぬ。この核が、あなた方の旅路の一助となることを願っております」


和真は恭子と視線を交わし、恭しく霞から天守核を受け取った。ずしりとした重みと微かな温もりを感じる。これが二つ目の天守核。元の世界への道が、また一歩近づいた…そう信じたかった。


「ありがとうございます、霞さん」

「ありがとうございます!」恭子も深々と頭を下げた。


「礼には及びませぬ。…して、次はどちらへ?」霞が尋ねる。


「次は…」和真は恭子を見た。


「そうだなあ…西の方に、ちょっと面白い天守がいるって聞いたことがあるんだ。備中松山城の…」


恭子が次の目的地の候補を口にする。


「備中松山…あそこの天守は山と一体化したような変わり者ですな。攻略は骨が折れるでしょう」霞が付け加える。


和真と恭子は霞に別れを告げ、霧が晴れ始めた丸岡城を後にした。手にした二つの天守核。一つは恭子の懐に、もう一つは和真が預かることになった。旅はまだ始まったばかりだ。


しかし、霞の残した不穏な言葉が和真の心に複雑な影を落としていた。


(本当に願いは叶うんだろうか…そして、その先に待つものとは…?)


隣を歩く恭子のどこか楽しげな横顔を見ながら、和真は一抹の不安を拭えずにいた。


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